何が彼女をそうさせたか 1930年(昭和5年) 邦画名作選 |
貧しい少女・すみ子(高津慶子)は、伯父の家に引き取られる。
そこでの生活も苦しく、すぐに曲芸団に売り飛ばされてしまう。
だが虐待され曲芸団を飛び出したすみ子は、様々な職を転々とする。
その後、曲芸団で知り合い恋心を抱いた新太郎(海野龍人)と再会する。
しかし、新太郎が失業してしまい、生活はさらに苦しくなる。
ついに二人は心中を図るのだったが…。
1927年1月、劇作家・藤森成吉が書き下ろした戯曲で、同年4月に築地小劇場で
公開されて好評を博し、全国的に波紋を広げた作品である。
1930年2月に公開されたこの映画もまた、その波紋の一つの広がりであった。
貧農の少女が家を追われて孤児院、曲芸団、養護施設、教会と転々として
さまよい歩く。
だが、どこへ行っても立派なのは表面だけで、みな醜い冷血漢ばかりだった。
そして社会の冷たさや偽善に翻弄され、ついに教会に火を放ち、放火犯人と
なる彼女の悲劇を扇動的に描いて、大衆に絶大なる感銘を与えたのである。
映画のラストで「何が彼女をそうさせたか」のタイトルが出ると、館内には
観客の拍手が巻き起こり、怒号が乱れ飛んだという。
映画は空前の大ヒットとなり、ヒロインの哀しい少女を演じた高津慶子は、
この一作で一躍大スターとなった。
製作 帝国キネマ
監督 鈴木重吉 原作 藤森成吉
配役 | 中村すみ子 | 高津慶子 | 曲芸団長・小川鉄蔵 | 浜田格 | |||||||||
琵琶師・長谷川旭光 | 藤間林太郎 | すみ子の伯父・山田勘太 | 浅野節 | ||||||||||
阪本佐平 | 小島洋々 | 玉井老人 | 片岡好右衛門 | ||||||||||
養育院人事院・原 | 牧英勝 | 市川新太郎 | 海野龍人 |