虹 1967年(昭和42年) ドラマ傑作選
佳子(松尾嘉代)は、心から愛することのできる男性・秋彦(児玉清)とめぐりあった。
だが皮肉にも、秋彦は見合い相手の達夫(勝呂誉)の兄だった。
物静かで芸術を愛する秋彦は、佳子にとって理想の男性だった。
しかし、二人の愛が、弟の達夫の心を傷つけたのを悟ったとき、秋彦は佳子の前から
身を引こうと決心するのであった。
主演の松尾嘉代はこの時期、日活の清純派スターとして活躍していたが、映画界斜陽とともに、
アクション映画が主流となり、日活の女優はたいていヤクザの情婦役にされてしまった。
そこで彼女は、TBS「東芝日曜劇場」を中心に、テレビドラマに活躍の場を求めることにした。
初主演となった本作では、松尾は見合い相手の兄のほうを好きになってしまうという役どころで、
二人の男性のはざまで揺れる女心を細やかに演じている。
この場合、まだ婚約したわけでもないし、見合い相手に正直に本心を打ち明けたらどうか、
という意見もあるかもしれない。
しかし、仮に兄のほうと本気で付き合うつもりなら、両家の誰からも支援を受けられず、
その後の二人の人生は波乱万丈となる可能性がある。
その兄は、そうならないように自ら身を引こうとしているわけで、いわゆる「道義上許されない
愛もある」というのが本作のテーマのようである。
(制作)TBS(原作)芝木好子(脚本)橋田寿賀子
(配役)高木佳子(松尾嘉代)高木和則(小笠原良智)高木蒔子(伊藤弘子)
安川秋彦(児玉清)安川達夫(勝呂誉)安川清明(清水将夫)安川絹子(三宅邦子)