薩摩おごじょ 1973年(昭和48年) ドラマ傑作選


薩摩藩士の家に生まれた娘・ふじ(小林亜紀子)は、何不自由なく育つ。
18歳になったふじは、兄・騎一郎(品川隆二)のすすめで、北島雅人
(金内喜久夫)と婚約する。
そんな折、明治10年(1877年)2月、西南の役が始まり、兄の騎一郎は
割腹自殺を遂げる。
そんな中、ふじが密かに心を寄せる雅人の弟・重人(津坂浩史)が、
政府方に味方している雅人を、ふじの目の前で切り殺してしまう。
いきおい、ふじと重人は逃亡の旅を続けることになった。
男尊女卑の気風の激しい薩摩藩士の家に生まれたヒロインが、西南の役をきっかけに
波乱の人生を歩んだ後、教育に情熱を注ぎ、故郷の鹿児島に私塾を開くまでを描く。
本作の特色は、鹿児島の女性(おごじょ)を主人公にした点にある。
これまでのドラマは薩摩隼人といわれる男性がほとんど主役で、薩摩おごじょの方は
いつも陰にかくれてしまっていた。
だが九州には、近代日本の黎明期に、男性の陰で大いに活躍した女性も多い。
日本最初の女医となった長崎のオランダおいねなど、その代表的人物の一人といえる。
本作に登場するヒロイン・神山ふじは、文明開化の波が押し寄せた明治初期とはいえ、
まだ封建色が色濃く残存していた薩摩にあって、自由恋愛をまっとうした人物である。
本作は、その自由恋愛によって当然こうむる迫害にもじっと耐え忍び、女一人、立派に
激動期を生き抜く物語である。
そんな不屈の忍耐力と精神を内面に秘めた薩摩おごじょを、小林亜紀子が熱演している。
小林は、神戸女学院在学中にスカウトされ、卒業後に東宝の清純派女優として活躍。
本主演作「薩摩おごじょ」では、110人の中から選ばれたラッキー・ガールである。
共演には、秋野太作の弟・津坂浩史をはじめ、品川隆二、新田昌玄、中尾彬のベテラン陣、
またナレーターを奈良岡朋子が担当するなど、ドラマをより重厚なものに仕上げている。
(制作)TBS(脚本)横光晃(主題歌)本田路津子「空と話そう」(作詞:菊地正次、作曲:山下毅雄)
(配役)神山ふじ(小林亜紀子)神山騎一郎(品川隆二)神山征一郎(新田昌玄)北嶋雅人(金内喜久夫)
北嶋重人(津坂浩史)北嶋重義(野々村潔)滝村道明(中尾彬)ナレーター(奈良岡朋子)
