女の暦 1984年(昭和59年) ドラマ傑作選
東京下町でおでん屋を営む立川昭子(京塚昌子)は、15年前に夫に先立たれ、既に50歳になる。
今更、惚れたハレたの年でもないし、といって女であることを忘れてしまえる年でもない。
女手ひとつで育ててきた一人息子の昌志(田村亮)は、老舗料亭の板前として奮闘しているし、
仕事のおでん屋の方もまずまず順調。
とりあえず幸せな毎日なのだが、このまま老いてしまうと思ったりすると、心の底にぽっかりと
小さな穴があいたような気持ちになるのは否めない。
そんなある日、息子の昌志が真剣な顔で「おでん屋をたたんでほしい」と切り出した。
理由を聞いてみると、息子は「おふくろに少しでも楽をしてもらいたいのだ」と言う。
昭子の店は、味が評判を呼んで繁盛しているが、息子の意見を聞いて、思い切りよく廃業してしまう。
かといって息子の世話にはなりたくない。また経済的に不自由をしているわけでもない。
なんかこう、一人の女として、心がときめくような新しい人生を見つけたいのだ。
そんなある日、昭子は偶然にも初恋の男・久之助(大村崑)とばったり出会う。
第二の青春を夢見る中年ヒロインを京塚昌子が好演。彼女と彼女をとりまく人間模様を描く。
本作は、中年の女が初恋の男と会って心ときめくが、結局何事も起らないという単純な内容を
女心と男心をうまくからませて面白く見せている。京塚の可愛い女ぶりがいい。
妻子持ちの初恋の男を演じる大村崑も巧いが、浮気が家族にばれて大騒動になってしまう。
一歩間違えば家庭争議にもなりかねない筋だが、登場人物は、いずれも善意の人物ばかりで、
終始笑って見ていられる。
久之助(大村崑)の妻で、割烹の女将に扮した新珠三千代、板前の高橋昌也、割烹の常連で
元・飲食店主の益田喜頓など、個性豊かな脇役陣の存在も際立っている。
(制作)フジテレビ(脚本)平岩弓枝
(主題歌)森昌子「ほお紅」(作詞:SHOW、作曲:小杉保夫)
(配役)立川昭子(京塚昌子)立川昌志(田村亮)井上久之助(大村崑)井上鉄子(新珠三千代)
井上知子(宮崎美子)菅原千紘(高橋昌也)大井信夫(岡本信人)近藤辰夫(益田喜頓)