大日向村 (おおひなたむら)   1940年 (昭和15年)   邦画名作選
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長野県の大日向村は、土地は痩せ、荒廃した寒村で、税金も滞りがちである。

ここでひとつ村を立て直すには、政府が推進している満州への開拓移民しかないと、
村長ら指導者たちの意見は一致した。

しかし満州へ移住となると、計り知れない不安が村民たちの上にのしかかった…。



貧困の解決のために、村の半分が満州に入植し、分村を作ったという実話の映画化。

だが実態は、すでに中国人農民のいる農地を取り上げて入植したのであり、当時の
大日本帝国の意を体した侵略行為だったことも疑いようのない事実である。


満州移民は、農村の貧困対策であると同時に、日本の植民地に人口を増やし、国力を
確固たるものにするのに必要とされた国策であった。


実際、映画は農民の開拓者精神を賛美するのみだったが、映画の公開後、満州移民の
志望者が急増しているのである。


しかし結果として、満州に行った農民の多くが敗戦の時に死に、その子は残留孤児になり、
生き残って帰国できた人たちも、肉親を失った上に、全財産を失ってしまったのである。


国策によって制作された映画が、どんな恐るべき災厄に人々を導くことになるかという
ことを、この映画は教えている。


 
 

  製作  東京発声   配給  東宝

  監督  豊田四郎   原作  和田伝

  配役 堀川清躬 河原崎長十郎 浅川武磨 中村翫右衛門        
  妻・きよ 伊藤智子 妻・千寿子 山本貞子        
      うめ    杉村春子              武井ふく    岬たか子         

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