おていちゃん 1978年(昭和53年) ドラマ傑作選
大正初めの浅草・猿若町の路地裏には、芝居の関係者や職人たちが、
温かい人情をもって、助け合いながら暮らしていた。
このこじんまりとした家々が寄り添うように立ち並んだ浅草界隈には、
金も無ければ、名誉も無いが、困ったときには手を貸し、知恵を出し合う
人々が揃っている。
そんな下町世界の優しさと、人には甘ったれないという厳しさの中で
育ったのが、おていちゃんこと「大沢てい子」だ。
明治41年5月、浅草三社祭の前日に大沢てい子(友里千賀子)は生まれた。
父・保之助(長門裕之)の第一声は「チェッ、女か」である。
保之助は芝居小屋の座付作者で、本当は役者になりたかった夢を子供に
託していたのだが、女の子では夢はかなえられそうになかったのだ。
成長したおていは、学校の先生になることを夢見る女学生になった。
進歩的な校長から、男女平等の考えを聞いたのもこのころだった。
やがて、おていは運命の出会いとなる新劇「三人姉妹」を観劇した。
血は争えないというべきか、おていは劇団「新文化」の研究生となり
芝居の世界へとのめり込んでいくのだった。
女優の沢村貞子の自伝エッセイ「私の浅草」をもとにしたホームドラマ。
大正初期から終戦直後の激動の時代を背景に、東京の下町で生まれ育った
ヒロインが芝居の世界へと足を踏み入れ、女優として成長していく姿を、
家族の情愛や下町の人情を通して描かれる。
趣味が三味線という主演の友里千賀子は、庶民的な味を出して、お年寄りから
子供までと幅広いファン層に支持された。
(制作)NHK(原作)沢村貞子(脚本)寺内小春
(配役)大沢てい子(友里千賀子)大沢保之助(長門裕之)大沢カツ(日色ともゑ)
大沢千代(萩尾みどり)大沢幸太郎(坂東八十助)片桐慎介(荻島真一)きぬ(古手川祐子)