おゆき 1977年(昭和52年) ドラマ傑作選
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土佐の鰹節問屋の娘おゆき(名取裕子)は、誰にでも好かれる明るい娘だ。
おゆきには松丸(前田吟)という兄がいた。実はこの二人、本当の兄妹ではない。
17年前、赤ん坊を連れた若い女巡礼が、店に置いていったのがおゆきだった。
ある日、おゆきに縁談が持ち上がった。
迷ったおゆきは、猛反対の兄・松丸と共に家を飛び出した。
高知から大阪へ、大阪から東京へ。おゆきの波乱の青春が始まった。
小山内美江子のオリジナル脚本「おゆき」は、大正時代を背景にした女の半生記である。
鰹節問屋の娘おゆきは、お遍路さんの捨て子だったということもあって、従兄との間に
起きた縁談を嫌い「兄(にい)やん」と呼ばれる義兄の松丸と共に、家を飛び出す。
土佐の方言に「いごっそう」という土佐男の気質を表す言葉がある。向こう見ずの
強情っぱりという意味だが、その反面、シャイで純粋なところもある。
前田吟の扮する「兄やん」が、まさにこの「いごっそう」で、おゆきに対して切ないほどの
情愛を抱きながら「兄やん!」と、おゆきに声をかけられるたびに、ジタバタしている。
ヒロインおゆきを演じた名取裕子は、青山学院大学文学部二年に在学中の現役女子大生。
主演に抜擢されたものの、エキストラ程度の芸歴しか持たず、まったくの素人であった。
だが、その新鮮さが茶の間の人気を集めることになった。
共演には、貫禄のあるおかみ役が定評の赤木春恵をはじめ、前田吟、原保美、田村高広、
千之赫子などのベテラン陣がずらりと顔を揃え、ヒロインの名取を盛り立てた。
ナレーターは、落語家の古今亭志ん朝が務め、名調子でドラマを彩った。
(制作)TBS(脚本)小山内美江子
(主題歌)入江恵真「思い出がほほえみかけて」(作詞:さいとう大三、作曲:惣領泰則)
(配役)ゆき(名取裕子)松丸(前田吟)さわ(大路三千緒)善右衛門(原保美)善太郎(柴田p彦)
美和(幸真喜子)保科健作(新木しげる)お吉(赤木春恵)幸造(田村高広)志津(千之赫子)
善兵衛(佐藤英夫)つね(高田敏江)大瀬久美(遥くらら)ナレーター(古今亭志ん朝)
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