しあわせの国 青い鳥ぱたぱた? 1985年(昭和60年) ドラマ傑作選
大阪でOL生活を送るハナコ(田中裕子)は、退屈な日々の繰り返しにふと疑問を感じ、失踪する。
今は神戸にある便利屋「猫の手」で、アルバイトをしながら、気ままな日々を過ごしている。
店の隣には、男と遊ぶことに夢中な母親がいて、幼い男の子・ヒロはほったらかしにされている。
ある日ハナコは、一緒に食事をしてほしいという客・タロー(蟹江敬三)の依頼を受ける。
ヒロを伴なって単身赴任のタローのマンションを訪れたハナコは、食卓を囲みながら
かつてない温かみを感じる。
それぞれに寂しさを抱える三人は、まるで本当の家族のように惹かれ合っていく。
さらにそこに妻に先立たれた老人・今雄(大友柳太朗)が加わり、四人の奇妙な共同生活が始まる。
井沢満のオリジナル脚本。一見、荒唐無稽に見える展開の中に、とらえどころのない現代という
時代の不安定さをあぶり出している。
人間は、したたかに生きているように見えても、内実は頼りなく、孤独には弱いものであるらしい。
ましてや現代の殺伐さの中で生活する人々は、どこかで絆を求めたり、夢を追ったりして生きている。
本作は、そうした人々の心象をうまく映像化して、ひと味違ったドラマに仕立て上げている。
家出したハナコ、単身赴任のタロー、母親に捨てられたヒロ、そして行き場のない老人・今雄。
登場人物四人の即席家族は、本物の家族よりも気配りと思いやりに満ちていて、悲しくも美しい。
現実とメルヘンとの二重映しを、四人とも見事に演じ切って見せている。
(制作)NHK(脚本)井沢満
(配役)ハナコ(田中裕子)タロー(蟹江敬三)今雄(大友柳太朗)ヒロ(谷真佐茂)