臨場 2009年(平成21年) ドラマ傑作選
警視庁鑑識課の倉石義男(内野聖陽)は、事件現場に急行し、遺体や遺留品から
自他殺の別などを見極める検視官である。
彼の眼力の鋭さは定評があり、死体の目利きにかけては他の追随を許さない。
ただ、意見が食い違うと、歯に衣着せぬ口調で上司にも平気で盾を突く異端児だ。
ある日、郷土史研究家が自宅地下室で、変死体で見つかった。
倉石はためらい傷があることから自殺と見立てる。
だが、倉石と対立する捜査一課の立原(高嶋政伸)は、他殺とみて捜査を進める。
倉石は立原とつかみ合いのけんかまでしながら、検視を重ねて真相に迫ろうとする。
事件現場に臨んで初動捜査に当たることを「臨場」と言うが、その主役の一人に検視官がいる。
他殺か、自殺か、事故死か、検視官の判断が、警察の捜査方針を左右する。ミスは許されない。
殺しを自殺と見誤れば、一つの凶悪犯罪を永久に眠らせ、その逆は、百人からの捜査員に長期間の
徒労を強いることになる。
ドラマでは、そうした死因をめぐる謎解きと共に、倉石(内野聖陽)と周囲との人間模様が描かれる。
とりわけ、警視庁捜査一課の管理官・立原(高嶋政伸)との対立は、物語の大きな縦軸となっている。
検視官としては優秀な倉石だが、その性格は豪放。
捜査会議や取調室に乗り込み、捜査のやり方に異見を挟むなど、越権行為もしばしばだ。
倉石はひたすら真実を追い求めようとするのだが、組織の規律を乱す行為は、管理官の立原としては
許しておけない。両者の言い分が正しいだけに、対立も激しい。
劇中に「死者の人生を根こそぎ拾ってやる」という倉石のセリフがある。
その根底にあるものは、無念にも死んでいった人間の思いをくみ取ってやりたい、という強い意志だ。
死者を慈しむからこそ、自説を曲げられないのだろう。
(制作)テレビ朝日、東映(原作)横山秀夫(脚本)坂田義和
(配役)倉石義男(内野聖陽)一ノ瀬和之(渡辺大)小坂留美(松下由樹)立原真澄(高嶋政伸)
小松崎周一(伊武雅刀)早坂真里子(伊藤裕子)矢野間文(松金よね子)