路傍の石 1938年(昭和13年) 邦画名作選 |
小学生の吾一(片山明彦)は、母親と二人きりで暮らしている。
父親の庄吾は、妻子を置いて東京に出たまま音信を断ち、
母親のおれん(滝花久子)が、賃仕事で生活を支えている。
家主の泰吉と担任の次野先生は、二人に親切だった。
泰吉の好意で、吾一は中学へ進学できそうだった。
だが、突然の父帰るで、その夢がこわれてしまう。
父が、母と泰吉の間柄を疑ったことが原因だった。
小学校を出た吾一は、母親と別れ、丁稚奉公に出る。
馬車馬のようにこき使われるが、暇を盗んで勉強を続けた。
吾一は、路傍の石のように放り出され、蹴とばされようとも、
ひたむきに自らの運命を切り開いていくのだった…。
1937年「朝日新聞」に連載された山本有三の同名小説の映画化。
身勝手な父親と哀れな母親を持って逆境に育ち、幼いうちから貧しい者は差別される
ことを思い知らされた主人公の吾一少年。
だが、決していじけることなく、あらゆる困難を乗り越えて社会に立ち向かっていく
少年像が好評を呼んだ。
だが大人になった吾一が、社会の矛盾を意識し始めたところで、原作の執筆が停止
となり、映画もここで中断され、終了してしまった。
理由は、小説の中で、正義感から資本家と闘う労働組合の青年が登場したため、
政府から執筆停止を命じられたためであった。
戦前の国民皆兵制度の下では、人権だの、権利だのと、労働運動を起そうとする者は
「非国民」扱いされる時代だったのである。
製作 日活
監督 田坂具隆 原作 山本有三
配役 | 愛川吾一 | 片山明彦 | 稲葉屋・黒子泰吉 | 井染四郎 | |||||||||
父・庄吾 | 山本礼三郎 | その母・おせい | 吉田一子 | ||||||||||
母・おれん | 滝花久子 | 久美田住江 | 沢村貞子 | ||||||||||
教師・次野立夫 | 小杉勇 | その妹・加津子 | 松平富美子 |