三匹の侍   1964年 (昭和39年)        邦画名作選

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旅の浪人、柴左近(丹波哲郎)は、或る村の水車小屋の近くで女の簪を拾う。

不審に思って水車小屋を覗いてみると、3人の百姓が武家の娘を監禁していた。
百姓の一人が言うには、この女は代官の娘だという。

年貢の取りたてがあまりに厳しいため、娘を人質に代官と交渉するつもりらしい。

無謀とも思えるお上への反旗であるが、左近は成り行き上、百姓に加勢することにした。


やがて代官が差し向けた手勢がやってくる。
その中に代官に雇われた用心棒、桜京十郎(長門勇)がいた。

左近は、あっという間に手勢の浪人たちを斬り捨て、京十郎と対峙する。
両者は刃を交えること数合、京十郎は凄腕の槍の使い手だった。


だが、百姓たちが義民であることを聞いた京十郎は「わしゃ、やめた」と槍を収める。

「そうと聞いたからは、わしゃ百姓の味方だ。なんせ百姓の生まれじゃからな」

京十郎は、何も知らぬままついてきたのだが、事情を知り百姓側に寝返ったのである。




粗野だが正義感溢れる柴左近、ニヒルな剣の使い手・桔梗鋭之介(平幹二朗)、朴訥な
槍の達人・桜京十郎の三匹の浪人が、剣の腕を頼りに漂白の旅を続けて行く娯楽時代劇。

見どころは、監督・五社英雄のアイデアによる派手な立ち回りシーンである。
「ドスッ、ガキッ」など、迫力ある刀の効果音をつけ、時代劇ファンを魅了した。

柴左近を演じた丹波哲郎は新東宝、桔梗鋭之介の平幹二朗は、新劇出身の俳優である。
だが、桜京十郎に扮した長門勇は、当時は無名に等しい新人だった。


新人といっても、彼は浅草のストリップ劇場で、幕間コントを長年やっていた。
それを見た五社英雄に「何とも言えないとぼけた味」を買われて「三匹」に抜擢。

岡山弁丸出しの人情味あふれる芋侍・桜京十郎を演じてお茶の間の人気を博した。


一躍ブレイクした長門には、その後映画やテレビ番組からオファーが殺到。
浅草の舞台で腕を磨いた器用さで現代劇から時代劇までカバーした。

のほほんとした親しみやすいキャラクターが印象的で、うだつの上がらない人物を装い、
いざという時に凄腕を発揮する、といった役どころを得意とした。



 
 
  製作  松竹

 監督  五社英雄 (ごしゃひでお)

  配役 柴左近 丹波哲郎 亜矢 桑野みゆき
  桔梗鋭之助 平幹二朗 おやす 香山美子
  桜京十郎 長門勇 松下宇左衛門 石黒達也

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