山路(さんろ)の笛   1953年(昭和28年)       ドラマ傑作選

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若い男女が二人、山道を歩きながら語り出す。

すると場面は、伝説の世界へと切替わる。


あるとき、糠次郎という農夫が天女に恋をして女房にする。

ところが、女房の美しさに惹かれて、畑仕事が手につかない。


そこで天女は、自分の絵姿を紙に描いて夫に渡す。

糠次郎は、そこでようやく畑に出る。



ところが、風のせいで絵姿が飛んで行ってしまう。


絵姿を入手した殿様が気に入り、天女を捜して城に連れて来る。

その美しさに心を奪われた殿様は、天女を妻にしようとするのだが…。



NHK開局後、三日目に放映された作品で、日本初のテレビドラマとされる。

東北地方の民話を素材に、篠笛の名手である農夫・糠次郎とその女房になった

天女の悲恋を描いたもの。


天女に扮したのは、俳優座の大塚道子(22歳)、糠次郎には劇団民芸の

下元勉(35歳)、殿様には加藤和夫、ほかに奈良岡朋子、水城蘭子らが出演した。


当時は、撮り直しのきくビデオ機器などはなく、ぶっつけ本番の生放送の時代。


スタジオは、NHKの普通の事務室を撮影用に改造したもので、しかもカメラは

二台だけという劣悪な環境であった。


そのカメラも重くて扱いにくく、カメラマンの不慣れもあって、天女役の女優が

スタジオの隅で着替えている姿を映す、といった失敗もあったという。


生放送だけに着替え時間もすぐにせっぱつまってしまうのだが、いったん始まったら

真剣勝負という緊張感が、テンポのよい変化のあるドラマを生み出した。

この作風が、のちに話題を呼ぶ連続テレビ小説「娘と私」につながっていった。



(制作)NHK(脚本)杉賀代子

(配役)糠次郎(下元勉)天女(大塚道子)殿様(加藤和夫)奈良岡朋子、水城蘭子


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