生と死の一五分間   1953年(昭和28年)       ドラマ傑作選

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ビルの守衛が、デパートの屋上から投身自殺を図ろうとする男を発見した。

(身投げしたその男は、ビルの突出物に引っかかっている)


守衛は、説得して何とか思いとどまらせようと、その男に呼びかける。

するとその男が言う。「僕が死ぬのと君と関係はないよ。」


守衛がそれに対して言う。

「いや、あるんです。身投げが出たら守衛たる私の責任ですからね…。」





デパートの屋上から投身自殺を図ろうとする男の救出を描いたドラマ。

その救出に要した時間がタイトルの通り15分間であった。

劇中で男が助けられるまでの時間と視聴者がそれを見ている現実の時間が

ちょうど重なるように演出されているのである。


本作は、主演の森繁久彌の一人芝居であり、その他の登場人物は、ほとんど声だけ

の出演という異色の構成となっている。森繁は本作で、15分間宙づりになったまま、

迫真の演技を披露して視聴者を驚かせた。



日本初の民放となった日本テレビは、開局に合わせて多くの街頭テレビを設置。

初期の番組は、まだ制作体制の未整備もあり、プロ野球、プロレスなどの

スポーツ中継が中心だったが、都内各所に設置した街頭テレビには、

連日大群衆が押し寄せ、人々の関心の大きさを示した。


こうしたスポーツ中継などの「即時性」は、テレビ独自の特質とされてきた。

生放送という現実的な制約を逆手に取って、「今、ここ」で行われているドラマを

見せることこそが、映画にはできないテレビの独自性だという考えである。

本作は、そうしたドラマの「即時性」へのこだわりが色濃く表れた作品となった。



(制作)NTV(日本テレビ)(脚本)飯沢匡(番組名)NTV劇場

(配役)男(森繁久彌)守衛、警官、社長、女給、学生、アナウンサー


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