幸福(しあわせ)への起伏 1953年(昭和28年) ドラマ傑作選
直木賞作家、今日出海の脚本で、テレビドラマ初の連続ホームドラマ(全13回)。
戦争で没落した資産家、加能家を舞台に、貧しくても元ブルジョアとしての誇りをもって
生きていこうとする一家の姿を描いたもの。
戦後という言葉がまだ消え去らない時代の視聴者に感銘を与えた作品である。
だが、制作現場は、狭いスタジオ、わずか2台のカメラ、生放送という悪条件であった。
ぶっつけ本番の生放送は、現在では想像出来ないほどの努力を必要とした。
演技者は、限られた放映時間内で、夜になったり、昼になったり、洋服を着たり、
パジャマに着替えたりしなければならない。
洋服からパジャマに変わる場合、当然別のシーンに入っている時にすばやく着替える。
洋服の下にパジャマを着込んでいるから、脱ぐのに20秒もあればいい。
ところが、パジャマから洋服になる時は大変である。
あらかじめ何分で着られるかを測っておいて、その時間は別のシーンを工夫して入れるのだ。
初めてのホームドラマ制作は苦労の連続だったが、そうした辛い体験から、かえって役者や
スタッフのあいだに、和気あいあいとしたチームワークが生まれたという。
本作の経験が自信となり、後に「バス通り裏(1958年)」の大ヒットを生むことになった。
(制作)NHK(脚本)今日出海
(配役)加能正彦(汐見洋)加能兼子(村瀬幸子)長男・明彦(河村健二)長女・波奈子(岩崎加根子)
女中・君や(鈴木光枝)海藤直方(松本克平)海藤夫人(北原文枝)