四季〜ユートピアノ〜 1980年(昭和55年) ドラマ傑作選
青森の農家に生まれた志木栄子(中尾幸世)は、東京に暮らすピアノ調律師。
幼いころ、七歳の兄と、雪の夜に学校で弾いたピアノの音が今も忘れられない。
その時、学校に火災がおこり、不幸にも兄は亡くなってしまった。
その後、父と母を次々と事故で失い、祖父母に引き取られて育った。
ある時、栄子は砂浜で音叉を見つける。それは、Aの音叉。
彼女は、音の仕事をしようと決心し、汽車に乗る。
最初は、ピアノ工場。そして、ピアノ調律師への弟子入り。
やがて、栄子は調律師として独立する。
四季折々の風景とマーラーの旋律を背景に、一人の若い女性が旅先での人々との
出会いを通じて成長していく姿を、詩情豊かに描いた映像詩。
主人公は、幼い日ピアノを焼失した記憶を持つピアノ調律師の栄子。
栄子は、その記憶にまつわる過去と現在を心の中で交錯させながら、
各地を旅し、さまざまな人に出会う。
現実社会の厳しさを体験し成長していく栄子の姿が、マーラーの旋律
によって象徴的に描かれた。
栄子を演じた中尾幸世の飾らない清々しい表情と演技が、美しい風景に
溶け込み、詩情を盛り上げた。
本作は、イタリア賞グランプリ、国際エミー最優秀賞を受賞した。
(制作)NHK(脚本)佐々木昭一郎
(配役)栄子(中尾幸世)兄(佐々木弘幸)父(工藤金一)ピアノ店主(宇都宮誠一)宮さん(宇都宮信一)愛子(堀口礼世)
祖父(古沢貞夫)祖母(古沢みよ)大川さん(大川義行)ケン(横倉健児)祐二(横倉祐二)恵子(小林千秋)
マーラー交響曲第四番(Mahler Symphony No.4)