白き牡丹に 1982年(昭和57年) ドラマ傑作選
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大正五年、長野高等女学校の教室が、女生徒の不満の声で騒がしい。
長野を訪れた女優の松井須磨子(あべ静江)に会いたいという生徒の声を、
女教師が圧殺しようとしたのだ。
生徒側の首謀者・なほ(賀来千香子)は、ならば、と校長の渡辺(小坂一也)
に直接訴えて許可を得た。
白藤館に滞在中の須磨子は同ホールで、師であり恋人でもある島村抱月への
愛を語り、中山晋平(羽田謙太郎)のピアノ伴奏で「ゴンドラの歌」を歌った。
文化のにおいに触れて、なほは感動した。
帰宅したなほは、父・藤次郎(夏木陽介)の伝言を聞いた。
なほを東京の大学へやることに反対だ、という。
父が反対する理由を知ろうと、なほは父のいる善光寺の本宅を訪ねた。
本宅には、なほの腹違いの義姉・京(秋野暢子)がいた。
なほは初めて、自分の義姉に会った…。
西沢裕子のオリジナル脚本。大正時代、信州の旧家に生きる対照的な姉妹の物語。
大地主の娘として生まれたなほは、父に愛人が出来たため、善光寺の本宅から
三里ほど離れた別宅で、母親とともに暮らしている。
なほは、島村抱月との恋愛を堂々と公表する女優・松井須磨子の生き方に共感し、
彼女に魂を奪われていた。
新しい女性の生き方を求めるなほは、大学進学を夢見るが、父の反対にあってしまう。
ヒロインは、オーディションで300名の中から選ばれた東京出身の賀来千香子、20歳。
18歳のときからモデルとして活躍しているが、演技の経験はなし。
そこで、収録の三か月前から、長野のTBS研修所で、発声練習や呼吸法、日舞など
演技の基本をみっちり叩き込まれたという。
(制作)TBS(脚本)西沢裕子
(配役)辻なほ(賀来千香子)辻京(秋野暢子)辻藤次郎(夏木陽介)辻さわ(伊藤栄子)みね(杉山とく子)
渡辺校長(小坂一也)向井源吉(寺田農)向井省吾(神田橋満)すが(宮下順子)佐倉(林ゆたか)
松井須磨子(あべ静江)中山晋平(羽田謙太郎)智了和尚(原保美)ナレーター(渡辺美佐子)
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