点と線 2007年(平成19年) ドラマ傑作選
博多郊外の海岸で男女の心中遺体が発見される。
男は汚職の摘発が進む建設省の課長補佐、佐山。
女は料亭の女中、お時であった。
現場の状況から、単純な「情死」と思われたが、捜査を進めるうちに
所轄の刑事、鳥飼(ビートたけし)と三原(高橋克典)は、ある重要な証言を得る。
お時の同僚ふたりが、商事会社社長の安田(柳葉敏郎)を東京駅で見送ったとき、
13番線ホームから線路を隔てた15番線を歩く佐山とお時を見かけたというのだ。
13番線から15番線が見渡せるのは一日のうちたった4分。
そこに作為を感じた刑事は、やがて安田を、二人を殺害した容疑者と特定。
が、彼には、事件当時は北海道にいたという崩せぬアリバイが…。!
原作は「時刻表トリックの傑作」と称される松本清張の同名長編推理小説。
1958年(昭和33年)に映画化されているが、50年を経て、久し振りにテレビドラマになった。
その撮影で一番困ったのは、当時走っていた電車がもはやないことだったという。
結局、オープンセットとCGを駆使して、昭和33年当時の駅と街並みを再現したのだが、
主演のビートたけしは「こんな電車に乗っていたのか」と改めて驚いたそうだ。
汚職がはびこり、巨悪が高笑いする物語は、松本清張の真骨頂だ。
物語の舞台となった昭和30年代は、戦後復興が一段落し、いよいよ高度成長を迎えようと
していた時代。その一方で、官民癒着による汚職、贈賄事件が相次いでいた。
疑獄事件が取り沙汰されながら、巨悪は逃げ延び、犠牲になるのは、中間管理職。
本作は、そうした社会悪が蔓延する時代に犠牲になった個人の悲劇が描かれている。
ビートたけしが演じる定年間近のベテラン刑事・鳥飼重太郎が、無理心中に見せかけた
完全犯罪の真相を暴いていくのだが、その犯行の動機を解き明かす過程も、説得力があり、
リアリティを生んでいる。
ドラマは二部構成、二夜連続で、5時間に渡り放映され、豪華キャスト陣の演技も相まって、
いずれも20%を超える視聴率を記録した。
(制作)EX(テレビ朝日)(原作)松本清張(脚本)竹山洋
(番組)テレビ朝日開局50周年記念スペシャルドラマ
(配役)鳥飼重太郎(ビートたけし)三原紀一(高橋克典)安田辰郎(柳葉敏郎)安田亮子(夏川結衣)
鳥飼つや子(内山理名)お時(原沙知絵)小林安子(樹木希林)桑山ハツ(市原悦子)笠井係長(橋爪功)
田中係長(小林稔侍)原種臣(江守徹)石田芳男(竹中直人)佐山憲一(大浦龍宇一)ナレーション(石坂浩二)