鳥帰る 1996年(平成8年) ドラマ傑作選
鳥取へ向かう途中、偶然知り合った男と女。
女は、母がいる倉吉の実家へ帰ろうとする麻美(田中好子)、
男は、痴呆症の妻に疎まれ、気晴らしの旅に出た木崎(杉浦直樹)である。
そんな二人に、新也(村上淳)が加わる。
写真学校に通ったが、進路が決まらないでいる。
ホームで見かけた麻美を追って、飛び込んできたのだ。
それぞれ心に痛みを持っていながら、表面上は何事もない風を装う三人。
旅先という気安さもあって、やがて彼らは心を開いてゆくのだっだ。
四年半前、結婚に反対する母親を振り切って、麻美は男と東京へ向かった。
だがその男は、別の女を作って逃げていった。
東京には誰も友人はいない。麻美は、耐え切れないほど孤独だった。
負い目から母を突き飛ばして家を出たものの、今度は自分が男に突き飛ばされて
しまい、途方に暮れる娘。
長年連れ添った妻が自分を嫌悪して寄せ付けない。原因が分からず苦悩する夫。
脚本の山田太一は、人の性(さが)を見詰める。本来、心の拠りどころであるはずの
家族の間で起きる様々な軋轢を通して、その狭間で揺れ動く心の性情を描き出す。
物語の終盤、木崎(杉浦直樹)のとりなしによって、娘が母親の胸に戻るシーンで、
田中好子は、麻美になりきった涙を流している。
(制作)NHK、NHKエンタープライズ21(脚本)山田太一
(配役)田口麻美(田中好子)木崎則行(杉浦直樹)中山新也(村上淳)
麻美の母・久代(香川京子)麻美の夫(丹波義隆) 木崎の妻・奈津子(原知佐子)