内田吐夢 (うちだ とむ) (1898-1970)


1898年(明治31年)4月26日生まれ。岡山県出身。尋常高等小学校中退。本名、内田常次郎。


高等小学校を中退し、横浜のピアノ製作所に奉公、ピアノ調律師をしていたという変わった経歴を持つ。

遊び仲間から「港のトム」の愛称で呼ばれ、のちに映画界で吐夢を名乗るきっかけとなった。

社会の底辺で懸命に生きようとする人々を、深い共感をもって描きあげた名作群の監督として知られる。

その底には激しいロマンティシズムを秘めており、それは中国大陸での生活で培われたものと思われる。


1920年(大正9年)大正活映に俳優として入社、
1921年(大正10年)大正活映解散後は、牧野教育映画製作所に入り、衣笠貞之助と共同で「噫小西巡査」を発表する。


1926年(昭和元年)日活に入社し「競争三日間」で監督に昇進、「なまけ者」「のみすけ禁酒騒動」など
数本の喜劇物で頭角を現わす。


1929年(昭和4年)傾向映画の代表作「生ける人形」や、時代劇スターだった大河内伝次郎を使った諷刺喜劇「仇討選手」で、
行き詰っていた時代劇の世界に新風を吹き込んだ。








1945年(昭和20年)単身で満州に渡る。満州映画協会に席を置き、革命後の中国で技術顧問を務め、映画人の育成に尽力した。

1954年(昭和29年)帰国し「血槍富士」で見事なカムバックを果した。

1957年(昭和32年)中里介山の長篇小説の映画化「大菩薩峠」は、仏教の世界観をテーマとした超大作時代劇となった。


1961年(昭和36年)中村錦之助を演技開眼させた「宮本武蔵」5部作は、時代劇映画の金字塔として高く評価された。

1965年(昭和40年)部落問題を底流に描いた「飢餓海峡」は、貧困から這い上がった犯罪者の戦後史を通じて、
絶望と混迷のなかで、懸命に生きようとする人間像を追究した内田作品の集大成となった。






代表作品

日活「噫小西巡査」(本間直司、衣笠貞之助、小泉嘉輔、森きよし、渡辺篤)1922年(大正11年)
日活「延命院の傴僂男」(島田嘉七、松波美子、川上吾郎、邦江弘久)1925年(大正14年)
日活「戦争」(川上吾郎、春日麗子、島田嘉七)1925年(大正14年)
日活「義血」(島田嘉七、春日麗子、本田歌子、藤川三之助)1925年(大正14年)

日活「地獄谷」(水島道太郎、西沢武男)1925年(大正14年)
日活「虚栄は地獄」(内田吐夢、竜田静枝)1925年(大正14年)
日活「競走三日間」(島耕二、菅井一郎、小杉勇、砂田駒子、石川輝男)1927年(昭和2年)
日活「靴」(島耕二、小杉勇、小西節子、渡辺邦男、石川輝男)1927年(昭和2年)

日活「未来の出世」(島耕二、徳川良子、小杉勇、見明凡太郎)1927年(昭和2年)
日活「漕艇王」(広瀬恒美、夏川静江、神戸光、南部章三、三桝豊)1927年(昭和2年)
日活「東洋武侠団」(浅岡信夫、広瀬恒美、山本嘉一、沢蘭子、根岸東一郎)1927年(昭和2年)
日活「なまけ者」(小泉嘉輔、牧きみ子、沖悦二)1927年(昭和2年)

日活「砲煙弾雨」(山本嘉一、島耕二、中野英治、梅村蓉子)1927年(昭和2年)
日活「のみすけ禁酒騒動」(島耕二、川又堅太郎、見明凡太郎、小杉勇)1928年(昭和3年)
日活「地球は廻る 第三部 空想篇」(小杉勇、島耕二、見明凡太郎、滝花久子)1928年(昭和3年)
日活「けちんぼ長者」(島耕二、入江たか子、山本嘉一、山内光、中村英雄)1928年(昭和3年)

日活「光」(島耕二、滝花久子、三桝豊、見明凡太郎)1928年(昭和3年)
日活「娑婆の風」(曽我廼家五九郎、対馬ルイ子、田村邦男、竹久新)1929年(昭和4年)
日活「生ける人形」(小杉勇、入江たか子、築地浪子、三桝豊、高木永二)1929年(昭和4年)
日活「日活行進曲 運動篇」(広瀬恒美、入江たか子、村田宏寿)1929年(昭和4年)

日活「大洋児出船の港」(広瀬恒美、見明凡太郎、佐久間妙子、滝花久子)1929年(昭和4年)
日活「汗」(島耕二、吉井康、滝花久子、沖悦二、村田宏寿)1929年(昭和4年)
日活「天国其日帰り」(田村邦男、佐久間妙子、見明凡太郎、菅井一郎)1930年(昭和5年)
日活「ジャンバルジャン 前後篇」(浅間信夫、山本嘉一、入江たか子、菅井一郎)1931年(昭和6年)

日活「日本嬢」(入江たか子、島耕二、菅井一郎、井染四郎、島津元)1931年(昭和6年)
日活「三面記事」(島耕二、高津愛子、菅井一郎、唐松沢子、島津元)1931年(昭和6年)
日活「仇討選手」(大河内伝次郎、山田五十鈴、佐久間妙子、清水俊作、高木永二)1931年(昭和6年)
日活「大地に立つ 前篇」(小杉勇、星玲子、田中春男、大島屯、伏見信子、酒井米子)1932年(昭和7年)

日活「大地に立つ 後篇」(小杉勇、星玲子、田中春男、大島屯、伏見信子、酒井米子)1932年(昭和7年)
日活「愛は何処までも」(島耕二、山田五十鈴、沖悦児、早川冴子)1932年(昭和7年)
日活「叫ぶ亜細亜」(藤原義江、千葉早智子、島耕二)1933年(昭和8年)
新興「警察官」(小杉勇、中野英治、松本泰輔、森静子)1933年(昭和8年)

新興「河の上の太陽」(高田稔、滝花久子、小杉勇、江川なほみ)1934年(昭和9年)
新興「熱風」(小杉勇、高津慶子、島耕二、三桝豊、見明凡太郎)1934年(昭和9年)
新興「白銀の王座 前篇」(小杉勇、島耕二、市川春代、荒木忍)1935年(昭和10年)
新興「白銀の王座 後篇」(小杉勇、島耕二、市川春代、荒木忍)1935年(昭和10年)

日活「人生劇場」(小杉勇、飛田喜美雄、吉田一子、山本礼三郎)1936年(昭和11年)
日活「生命の冠」(岡譲二、滝花久子、伊染四郎、原節子、見明凡太郎)1936年(昭和11年)
日活「裸の町」(島耕二、村田知栄子、小杉勇、須藤恒子、山本嘉一)1937年(昭和12年)
日活「限りなき前進」(小杉勇、滝花久子、轟夕起子、片山明彦)1937年(昭和12年)

日活「東京千一夜」(村田宏寿、見明凡太郎、吉谷久雄、星ひかる)1938年(昭和13年)
日活「土」(小杉勇、風見章子、どんぐり坊や、山本嘉一、見明凡太郎)1939年(昭和14年)
日活「歴史 第一部 動乱戊辰」(小杉勇、笠原恒彦、高木永二、中田弘二、轟夕紀子)1940年(昭和15年)
日活「歴史 第二部 焦土建設、第三部 黎明日本」(小杉勇、広瀬恒美、佐藤円治、轟夕紀子)1940年(昭和15年)

松竹「鳥居強右衛門」(小杉勇、水戸光子、志村喬、小沢栄太郎、月形龍之介)1942年(昭和17年)
東映「血槍富士」(片岡千恵蔵、島田照夫、月形龍之介、喜多川千鶴、田代百合子、加東大介、植木基晴)1955年(昭和30年)
新東宝「たそがれ酒場」(小杉勇、小野比呂志、宮原卓也、津島恵子、野添ひとみ)1955年(昭和30年)
日活「自分の穴の中で」(月丘夢路、北原三枝、三国連太郎、宇野重吉、金子信雄)1955年(昭和30年)

東映「黒田騒動」(片岡千恵蔵、大友柳太朗、片岡栄二郎、高堂国典)1956年(昭和31年)
東映「逆襲獄門砦」(片岡千恵蔵、高千穂ひづる、薄田研二、月形龍之介)1956年(昭和31年)
東映「暴れん坊街道」(佐野周二、植木基晴、千原しのぶ、山田五十鈴)1957年(昭和32年)
東映「大菩薩峠」(片岡千恵蔵、中村錦之助、波島進、大河内伝次郎、長谷川裕見子、丘さとみ)1957年(昭和32年)

東映「どたんば」(江原真二郎、中村雅子、波島進、岡田英次、東野英治郎、志村喬)1957年(昭和32年)
東映「千両獅子」(市川右太衛門、大川恵子、千原しのぶ、進藤英太郎、大河内伝次郎)1958年(昭和33年)
東映「大菩薩峠 第二部」(片岡千恵蔵、中村錦之助、長谷川裕見子、丘さとみ、木暮実千代)1958年(昭和33年)
東映「森と湖のまつり」(高倉健、香川京子、三国連太郎、中原ひとみ)1958年(昭和33年)

東映「大菩薩峠 完結篇」(片岡千恵蔵、中村錦之助、長谷川裕見子、丘さとみ、東千代之介)1959年(昭和34年)
東映「浪花の恋の物語」(中村錦之助、有馬稲子、東野英治郎、田中絹代、片岡千恵蔵)1959年(昭和34年)
東映「酒と女と槍」(大友柳太朗、淡島千景、花園ひろみ、黒川弥太郎、片岡千恵蔵)1960年(昭和35年)
東映「妖刀物語 花の吉原百人斬り」(片岡千恵蔵、水谷良重、木村功、山東昭子、千原しのぶ)1960年(昭和35年)

東映「宮本武蔵」(中村錦之助、高倉健、木村功、三国連太郎、入江若葉、木暮実千代、丘さとみ)1961年(昭和36年)
東映「恋や恋なすな恋」(大川橋蔵、瑳峨三智子、宇佐美淳也、河原崎長一郎)1962年(昭和37年)
東映「宮本武蔵 般若坂の決斗」(中村錦之助、入江若葉、三国連太郎、月形龍之介)1962年(昭和37年)
東映「宮本武蔵 二刀流開眼」(中村錦之助、入江若葉、木村功、木暮実千代、丘さとみ、平幹二朗)1963年(昭和38年)

東映「宮本武蔵 一乗寺の決斗」(中村錦之助、入江若葉、木村功、丘さとみ、平幹二朗、高倉健)1964年(昭和39年)
東映「飢餓海峡」(三国連太郎、左幸子、三井弘次、加藤嘉、沢村貞子、藤田進、高倉健)1965年(昭和40年)
東映「宮本武 蔵巌流島の決斗」(中村錦之助、、高倉健、入江若葉、丘さとみ、田村高広)1965年(昭和40年)

東映「人生劇場 飛車角と吉良常」(鶴田浩二、若山富三郎、藤純子、左幸子、高倉健)1968年(昭和43年)
東宝「真剣勝負」(中村錦之助、沖山秀子、田中浩、岩本弘司、三國連太郎)1971年(昭和46年)