Woman(ウーマン) 2013年(平成25年) ドラマ傑作選
青柳小春(満島ひかり)は、夫を事故で亡くし、二人の子供を抱えるシングルマザー。
仕事を掛け持ちして必死で働くものの、家計は苦しく、生活は困窮する。
追い詰められた小春は、生活保護を受けようと役所に行く。
だが、申請をすると却下されてしまう。
理由は20年会ってない母親が援助を申し出たからだという。
自分を捨てた母がそんなことを言うはずがない、と信じられない小春。
彼女は、実家に戻って、母親に理由を問い詰めようとするが…。
シングルマザーは強い。なぜなら、覚悟が違うからだ。
彼女たちは「自分が頑張って子供たちを食べさせていく」と決意した女性たちだ。
そこに母親としての矜持があり、尊厳がある。
だがドラマは、彼女たちへの容赦ない仕打ちがこれでもかと描かれる。
不安定な雇用、親子の確執、周囲の冷たい視線、そして栄養不良からくる自身の病気。
我が子を心から愛し、自らを犠牲にしてでも彼らを守ろうとするヒロインの懸命に生きる姿、
そして現実社会の生きづらさが観る者の胸に迫る。
ヒロイン・小春の周囲には、だらしがなく、情けない男たちが次々と登場する。
稼ぐ能力もなくひたすら小説を書き、DVに走る父親、生活を妻に委ねて働かない怠け者の義父、
妻を気遣うフリをするが、家事も子育ても手伝わない役所勤めの夫。
このどうしようもなく情けない男たちとの対比で、強く生き抜くヒロインの姿が際立っている。
劇中でヒロインが、生活に行き詰まり、生活保護を申請に福祉事務所を訪れる場面がある。
すると、窓口で「誰か援助してくれる親族はいないのか」としつこく聞かれる。
このあたりは、昨今の新聞をにぎわしている、生活保護に対する締め付けや、福祉の削減、
家族の扶養責任を強調する現場の実態を反映している。
さらに、母親の帰りを待つ子供たちが、児童相談所の職員に施設に連れて行かれそうになるなど、
本来住民を守る立場の行政からの様々な仕打ちがあからさまに描かれている。
こういった幾度もヒロインを襲う絶望感と孤独のシーンは、まさに作者の意図する所であろう。
本作は、困窮の生活のなかで、懸命に生き抜くヒロインの悲惨な状況を一方的に描くことで、
その背景にある、弱者を置き去りにする「政治的貧困」をシニカルに示唆しているのである。
(制作)日本テレビ、ケイファクトリー(脚本)坂元裕二
(配役)青柳小春(満島ひかり)青柳望海(鈴木梨央)青柳陸(橋來)青柳信(小栗旬)植杉紗千(田中裕子)
植杉健太郎(小林薫)植杉栞(二階堂ふみ)蒲田由季(臼田あさ美)澤村友吾(高橋一生)砂川良祐(三浦貴大)