安ベエの海 1969年(昭和44年) ドラマ傑作選
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安ベエこと安代(木内みどり)は、大阪でも指折りのメリヤス問屋の末娘。
セーラー服姿も初々しい彼女に、ある日母親が縁談を持ってくる。
相手は将来有望な海軍中尉の加納敬作(有川博)で、しかも美男子だという。
母への義理のつもりで受けた見合いだったが、敬作のりりしさにあこがれた
安代は、彼の妻になった。
まだ少女時代の稚なさの残る安代は、軍人の妻らしくなりたいと努力したが、
緊張するほど、無邪気な失敗を繰り返した。そんな妻を、敬作はいとしく思った。
しばらく平穏な日々が続いたが、ついに敬作の出征の日が来た。
夫を見送った後、実家に戻った安代は、悲しみに満ちた毎日を送った。
戦争は次第に苛烈さを加え、敬作の出征中に、安代は男の子を生んだ。
そして半年の後に、敬作の戦死が伝えられた……。
太平洋戦争開戦前後、メリヤス問屋の末娘、安代は海を愛する海軍中尉敬作と結婚する。
しかし幸せも束の間、戦争が夫を奪う。
未亡人となった安代は遺児に明日を託し、明るくけなげに生きるのだった。
ポーラテレビ小説第三作目の本作は、初期の名作との呼び声が高い作品である。
それはひとえに、ヒロインを演じた木内みどりの魅力がふんだんに発揮された
からにほかならない。彼女の陽気な性格と情感豊かな名演があってこそだ。
木内は高校を一年で中退して、劇団四季に入るほどの芝居好き少女で「ハムレット」
「王子と乞食」の舞台に立つなど演技歴豊富なたのもしい新人であった。
共演は、有川博、浜田寅彦、初井言栄、佐藤オリエ、二谷英明らベテラン陣が
木内を盛り立て、本作をより魅力的なものに仕上げている。
(制作)TBS(原作)佐藤愛子(脚本)林秀彦
(配役)岩田安代(木内みどり)岩田豊吉(浜田寅彦)岩田のぶ(初井言栄)
田辺敏子(佐藤オリエ)加納敬作(有川博)草野中尉(二谷英明)
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