ドードー鳥が言った。「体をかわかすのに一番いい方法は、コーカスレースだ」
「コーカスレースって何?」とアリス。
ドードーは「やってみればわかる」と言い、コーカスレースをすることに。
ドードー鳥はまず、レースのためのコース線をまるく書きました。
それから一同みんな、そのコースのあちこちでいちにつきます。
そしてだれも「よーい、どん!」といわないのに、みんなすきなときに走りだしました。
三〇分かそこら走ると「かけっこおわり!」ドードーがいきなりさけびます。
するとみんな、はあはあ言いながら、聞きました。「でも、だれが勝ったの?」
「みんな勝ったんだ。だからみんなが賞品をもらわなければならない」とドードー鳥。
「でもだれが賞品をくれるんだい?」
「そりゃ、もちろんこの子だよ」ドードーはアリスを指さしました。
するとみんながアリスのまわりにあつまって、くちぐちにさけびます。「賞品! 賞品!」
困ったアリスが、ポケットに手をいれると、キャンデーがでてきました。
そしてそれを賞品としてわたすと、ちょうどみんなに一つずつありました。
するとその時、あの白ウサギが、大あわてで、アリスの目のまえを走っていきました。
「たいへんだ、たいへんだ、手袋と扇子(せんす)をなくしてしまった!」
見ると、アリスの足もとに、白ウサギの手袋と扇子が落ちているではありませんか。
「どこへ落としたんだろう。見つからないと、女王さまに死刑にされてしまうぞ!」
アリスは大声で叫びます。「ウサギさん、まってくださいな、手袋と扇子は、ここにありますよ!」
アリスは、急いで手袋と扇子をひろうと、走り出しました。
でも、体が小さくなったアリスは、とても追いつけません。とうとう、白ウサギを見失ってしまいました。