4月7日 アトム大使 1951年(昭和26年) |
1951年(昭和26年)4月、雑誌「少年」に連載漫画「アトム大使」が発表された。
科学省長官・天馬博士は、交通事故で一人息子・トビオを失ってしまう。
そこで博士は、トビオにそっくりのロボットを、科学省の総力を結集して造りあげる。
天馬博士はそのロボットを息子のように愛した。
だが、やがて成長しないことに腹を立て、そのロボットをサーカスに売り飛ばしてしまう。
身勝手な人間たち。そして、ロボットの悲しみ。
やがて、優しいお茶の水博士に引き取られたアトムは、人間の役にたつために、
さまざまな悪人やロボットと戦いを繰り広げる。
だが物語は、アトムの爽快な活躍だけが描かれた作品ではない。
根底には「差別」や「科学文明のひずみ」などの大きなテーマがあり、
それに悩むアトムの姿が描かれることのほうが多かった。
人間を守るために戦っても、何か問題が起こると「ロボットはやはり信用できない」
と言われ、差別を受けてしまう。
ロボットは人間の手によって造られる。
ゆえにロボットは、生まれながらにして下等な存在であるという意識を人間はもっている。
そこで人間はロボットを当然のように差別し、様々な対立や問題が生じてくる。
手塚治虫は言った。「相いれない機械と人間。アトムはその仲介役なのだ」と。
こうした「意志の疎通の欠如による悲劇」が、創作の動機にあるという。
それゆえ物語のなかには、迫害されるロボットたちの姿がくりかえし描かれる。
創造主である人間の横暴によって犠牲にされ、最後死に絶えるロボットたち。
物語の最終回は、アトムは人類を救うため、悲劇的な結末を迎えてしまう。
本当に救いがない。これが正義のヒーロー・アトムの最後なのか。
それでも物語世界に引きずり込まれ、最終回まで夢中になって読んだのは、
作者が天才・手塚治虫だったからであろうか。