7月11日    アルザス・ロレーヌ    (Alsace Lorraine)
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小説「最後の授業」は、フランスの作家ドーデ(Daudet)の短編集の中の一編である。

フランスの敗戦とともに、アルザスとロレーヌではフランス語の授業が禁じられた。

フランス語教師は、職を失って学校を去らねばならなくなった。

その最後の授業で、教師は、フランス語がいかに美しい言葉であるかを切々と説く。

そして「Vive La France(フランス万歳)」と黒板に書いて授業を終える話である。



                   




もっともこの物語は、フランス側からの一方的な美談として書かれたらしい。

この地は、元々ドイツ領だったが、1648年、三十年戦争のどさくさでフランスが占領した。


その後、1871年、普仏戦争でドイツが勝利し、アルザス・ロレーヌ地方を奪いかえした。

つまり、占領されていた領土が、もとのドイツに返還されたに過ぎないのである。


だがこの物語は、二つの国と二つの文化の狭間で翻弄された人々の悲哀を物語っている。

フランス・ドイツ間には、大河や山脈などの自然の国境線がない。


特に19世紀以降は、石炭・鉄鉱石の産地であった独仏国境をめぐる争いが激化した。

このため、二度にわたる大戦で、アルザス・ロレーヌは激しい戦場となった。

だからこそ、EU統合の象徴である「欧州評議会」は、この地に置かれたのである。


ヨーロッパは元々、多民族社会であり、複数の言語が共存する地域である。

アルザス・ロレーヌは、現地語のほか、フランス語、ドイツ語が公用語となっている。


スイスやベルギーなども、住民が日常的に三ヵ国語以上を話す多言語国家だ。

その最大の理由は、自国語だけでは、高等教育を受けることができないからである。


世界で最も外国語が苦手な国は、アメリカと日本である。それはなぜだろうか。

理由は「必要がない」からである。

外国語を身に付ける必要に迫られていないのだから、苦手なのはあたりまえだ。


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