どちらの道に行こうか迷っていたアリス。すると、どこからか不思議な歌声が聞こえてきた。
♪ 願いかなって、めでたやめでた。♪ ほーいほい、ほーいほい。
色とりどりのアルファベットのけむりが、ぷかりぷかり。好奇心(こうきしん)にかられたアリスは近づいてみた。
大きなきのこの上に、とても大きなイモムシがいた。彼は、のんびり水ギセルをふかしている。
「あんた、だれだい?」アリスに気づいたイモムシは、いきなりたずねます。
「だれって、いわれても…」ちょっともじもじしながら答えるアリス。
「あたし、自分がだれだか、わからなくなったの。だって、体が急に、小さくなったりするんですもの」
イモムシは、ぷかぁっとけむりをはくと、落ちつきはらって言った。「かたっぽは高くなる。かたっぽは低くなる」
アリスは、目をぱちくり。「かたっぽ? なんの、かたっぽ?」
「ははは、きのこのことさ。片方を食べるとせがのびるし、反対側でせがちぢむ」
そしてつぎのしゅんかん、イモムシは消えて見えなくなってしまった。
きのこの両側をちぎって両手に持ったアリス。試しに、右手のきのこを一口。
すると突然、彼女の首が長くなって、木の枝まで高く伸びてしまいます。
アリスが左手のきのこを一口を食べると、ようやくもとの大きさにもどることができた。
大きさをコントロールするコツがわかったアリス。エプロンの左右のポケットに、きのこを入れて先を急ぎます。
アリスがやってきたのは「こっち」「あっち」と、標識(ひょうしき)だらけの森。「どちらへいけば、いいのかしら?」
「そりゃ、あんたが、どこへいきたいかによるな」上のほうから声がした。
見ると、木のえだに、チェシャ猫がねそべって、にんまりと笑っている。アリスはちょっとぎょっとしました。
「こんにちは。あたし、白ウサギさんをさがしているんです」おずおずとたずねます。
「白ウサギをさがしてるなら、むこうにヘンテコな帽子屋がいるから、聞けばいいや」
「もう変な人たちには会いたくないわ」とアリス。
「この世界じゃ、みんなヘンテコなのさ。この俺(おれ)だって…」にやにや笑いながら、チェシャ猫はすうっと消えてしまった。