7月28日 ロンドン塔のカラス (Raven of London Tower)
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ロンドン塔のワタリカラス(Raven)
ロンドン塔で飼われているカラスたちはレイブンと呼ばれている。
「カラスが死ぬと王室が滅びる」という昔からの言い伝えがある。
一羽死ぬと、野生のカラスを補充して、衛兵が大切に飼育している。
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ビーフ・イーター(Beefeater)
ロンドン塔のガイドさん。かつては衛兵専門だった。
その昔、衛兵は給料でなく、牛肉を支給されていた。
それでビーフ・イーターというニックネームがついたらしい。
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テムズ河畔に築かれたロンドン塔は、1066年に即位したウィリアム1世の居城。
当初は、外敵から守るというより、王の権力の象徴だった。
その後、16世紀には監獄に転用される。
異端者や反逆者の幽閉場所となり、処刑場としても使われた。
ここで命を落とした歴史上の人物は数知れない。
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最も悲惨といわれるのが、13歳で即位したエドワード5世と、弟のリチャード。
彼らの叔父で、その後国王となったリチャード3世に暗殺されたとうわさされた。
そのほか、ヘンリー8世の離婚に反対した法律家のトマス・モアが処刑された。
そのヘンリー8世の2番目の妻のアン・ブーリンや、5番目の妻のキャサリン。
彼女たちもここで処刑されている。
後にイギリスの女王となるエリザベス1世も幽閉されたことがある。
ロンドン塔は、血塗られた歴史を眺め続けた中世の城塞であった。
1988年世界遺産登録。今では多くの観光客が訪れる博物館となっている。
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レディー・ジェーン・グレイの処刑
英国史上初の女王ジェーン・グレイは、即位後16歳の若さで処刑されたことで知られる。
わずか9日間だけの在位だったため「9日間の女王(Nine Day Queen)」と呼ばれた。
この絵画は、ロンドン塔でなく、国立美術館(National Gallery)に展示されている。
1900年、ロンドンに留学した夏目漱石は、本作に感銘を受け、小説「倫敦塔」を書いている。
(The Execution of Lady Jane Grey by Paul Delaroche)