しばらく行くと、またまた、アリスの好奇心(こうきしん)がうずうず。
帽子屋、三月ウサギ、眠りネズミが、テーブルを囲(かこ)んで、ティー・パーティの真っ最中。
「本日は君の誕生日ではなかったかい?」 帽子屋がアリスにたずねます。
「いいえ、ちがうわ」 アリスがこたえます。
「それじゃあ、誕生日じゃない日のお祝いをしようじゃないか」
誕生日は一日だけしかないけれど、 残りの 364日は誕生日じゃない日。
さあ、誕生日じゃない日を祝おう。そうすれば、毎日がパーティーだ!
「ところで、白ウサギさんがどこにいるか、教(おし)えてくださる?」 アリスがたずねます。
「教えてあげるから、ここに坐って、おいしいケーキとジュースをお飲みなさい」 帽子屋が親切そうに言います。
アリスは坐って、お皿やコップをながめました。けれどもケーキやジュースはどこにもありません。
「何も見あたらないんですけど」 とアリス。
「だってないもん」 と三月ウサギ。
「ないのならお茶でも飲みなさい」 帽子屋が熱心にアリスにすすめます。
けれども、湯飲みの中も空っぽでした。
楽しそうなティー・パーティと思ったらとんでもない。ここにいても時間のむだ。
「あたし、時間がないの」 アリスは、思いっきり顔をしかめて立ちあがり、歩き去(さ)っていきます。
帽子屋たちは、アリスが行ってしまっても、まるで気にしませんでした。
アリスのほうは、一、二回ほど振(ふ)りかえって「もどってこいと言ってくれないかな」などと思ったりしました。
でも最後に振(ふ)りかえったとき、なんと二人は眠りネズミをお茶のポットにおしこもうとしていました。