とある住宅街。アスファルトの割れ目を突き破って出てきた大根。
「どこからタネが来たのか」と不思議だが、おそらく風で飛んできた種子が、
このアスファルトのくぼみに着地して、幸運にも育ったものと考えられる。
水や肥料をやって世話したのでもない。過酷な状況の中で元気に育つ命に、
いつの間にか「ど根性大根」と名前がついた。
戦後「リンゴの歌」というのが大流行した。
「赤いリンゴに、くちびる寄せて」というあの歌である。
うちひしがれた戦後の人々の心に、この歌は明るい未来を予感させた。
昔から、日本人というのは、自然の中に生命力があって、人間はその生命力を
くみとって生かされていると考えている。
だから、大根から生きる勇気をもらい、赤いリンゴから生きる希望をもらい、
すくすく育ったタケノコからは、元気をもらったりするのである。