11月 29 日 不思議の国のアリス(8) (ジャックのさいばん)
お城では、ちょうどハートのジャックがさいばんを受けています。
まわりには、白ウサギとトランプの兵隊たち、それに帽子屋と三月ウサギもいました。
「さいばんをはじめる。なんのさいばんか、話すがよい」 さいばんちょうは王さまです。
それを合図(あいず)に、白ウサギが、ラッパを三回ふきならすと、まきものを、くるくるっと広げた。
「女王のパイを盗んだのは、まさにハートのジャックである」
読みおわったとたん、女王が判決(はんけつ)をくだします。「ハートのジャックを死刑に処(しょ)する!」
アリスはあきれて飛び出します。「ちょっと、まってくださいな!」
「どうしたんじゃ、アリス?」 さいばんちょうの王さまがたずねます。
「どうしたもこうもないわ! いきなり判決で死刑だなんて、ひどすぎるじゃない!」
アリスがおこると、体がまた突然、大きくなっていきました。
「このやかましいばけもの女を殺しておしまい!」ハートの女王が叫びました。
トランプの兵隊たちは命令を耳にすると、いっせいにアリスにおそいかかってきました。
「まあ、たいへん!」 アリスは大声をあげると、手を伸ばしてはらいのけようとしました。
「アリス、目をさましなさい!」このとき、突然、アリスはお姉さんの声を耳にしました。
アリスの顔に、落ち葉が、トランプの兵隊のように、まいおりていました。
「ね、すっごくへんな夢を見たの!」アリスは不思議な冒険(ぼうけん)のことをお姉さんに話すのでした。
アリスの話がおわると、お姉さんはアリスにキスして言います。
「それはとてもふうがわりな夢だったわね。でもそろそろ帰ってお茶にしましょう。もう時間もおそいし」
そこでアリスは立ちあがって歩き出しました。
歩きながら、なんてすてきな夢だったんだろう、と心から思うのでした。