12月23日 平家物語

(琵琶弾き語り 野島洋美)
祇園精舎(ぎをんしゃうじゃ)の鐘の声 諸行無常(しょぎゃうむじゃう)の響きあり
沙羅双樹(しゃらさうじゅ)の花の色 盛者必衰(じゃうしゃひっすい)の理(ことわり)を顕(あらは)す
奢(おご)れる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
猛(たけ)き者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵(ちり)に同じ

平家の栄華と没落を描いた軍記物語「平家物語」は、作者不詳だが、鎌倉時代に成立したと思われる。
「祇園精舎の鐘の声」の有名な書き出しをはじめ、平易で流麗な名文として広く知られる。全十二巻。
巻一「祇園精舎」の段で諸行無常、盛者必衰の理を説いた後、平忠盛の昇殿を契機として
その嫡男・清盛の代に平家が頂点を極めるようになるところから始まる。
以後、繁栄を極める平家と反感を抱く後白河法皇とその近臣たちとの対立、そして後白河法皇の幽閉、
後白河法皇の皇子・以仁王(もちひとおう)の平家追討の号令と落命と続くが、頼朝挙兵の報の後、
清盛の死により平家の命運は大きく傾いていく。
信濃で挙兵した木曾義仲が平家の大軍を撃破し、平家に代わって京を制圧する。
しかし頼朝は、義仲が先に京に入ったことを快く思わず、鎌倉から義仲追討の指示を出す。
頼朝から派遣された義経は義仲を討伐し、次いで都落ちした平家を追って、軍を西に進め、
一ノ谷合戦、屋島合戦に勝利する。敗走する平家は長門国・壇ノ浦へと逃げ落ちる。
これら源平の合戦が物語の縦糸とするならば、横糸として事件や人物の余話および和漢の故事、たとえば
源頼政の鵺(ぬえ)退治、勅撰歌人・忠度や琵琶の名手・経正の都落ちのさまなどが挟まれる。
巻十一は、母・二位尼と愛息・安徳天皇の入水を見て、後を追う建礼門院徳子が源氏に捕らわれ、
宗盛・重衡などの平家の武将が次々と処刑されるところで巻を終える。
