ミシェル・シモン(Michel Simon)

生年月日 : 1895/04/09
出身地 : スイス/ジュネーブ
没年 : 1975/05/30

様々な職業を転々としたあげく、1915年、ジュネーブの小劇場でエキストラとして舞台に立つ。

1925年、マルセル・レルビエ監督の「生けるパスカル」で映画デビュー。

その後、ジャン・ルノアール監督に認められて「のらくら兵 1928」「牝犬 1931」
「素晴らしき放浪者 1932」等、立て続けに出演。

老若の見分けのつかない特異な風貌と、自由放縦な振る舞いで、仏映画史上初の「醜男スター」
として評判を取る。

1967年「老人と子供」で孤独な老人ペペを演じ、ベルリン国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。



代表作品

    牝犬(めすいぬ La Chienne)1931年(仏)

ルグラン(シモン)は、メリヤス会社の会計係をしている冴えない四十男だ。妻はかつての上官の未亡人だが、
いつも小言ばかりで、彼は飽き飽きしている。

ある夜、彼はリュリュ(マレーズ)という若い街の女を助ける。そんな彼女に、ルグランは一目惚れして、
入れ揚げてしまう。だが現実はそんなに甘くなかった。

若い女に狂う初老の男が、次第に身を持ち崩して、公金横領から殺人へと転落してゆく悲劇を描き出している。
愚かな人間描写だが、映画の冒頭で「登場人物は、皆さんと同じ哀れな人間」と前口上がある。
うだつのあがらぬ中年男の哀愁をシニカルかつユーモラスに描いたルノワール監督の傑作。

(監督)ジャン・ルノワール(Jean Renoir)
(出演)ミシェル・シモン(Michel Simon)ジャニー・マレーズ(Janie Marèse)
       
       
      旅路の果て(La Fin du jour)1939年(仏)

舞台は没落した役者たちが集う老人ホーム。彼らは過去の栄光を誇りにして余生を送っている。
そこへ新しくサンクレール(ジューヴェ)という、かつて人気のあった老役者が入所してくる。

役者というのは、舞台で喝采を浴びた過去が忘れられない虚栄心の塊のような生き物である。
彼らはかつての栄光を夢見て大言壮語し、互いに中傷し、それゆえに悲劇を招いてしまう。

ミシェル・シモンは、舞台経験が一度もない代役専門の役者を演じている。老人ホームの芝居で
初めて主役として舞台に立つが、とたんに頭が真っ白になって、台詞を忘れて崩れ落ちてしまう。

(監督)ジュリアン・デュヴィヴィエ(Julien Duvivier)(出演)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)
ミシェル・シモン(Michel Simon)ヴィクトル・フランサン(Victor Francen)
 
       
       
    悪魔の美しさ(La Beaute du diable)1950年(仏)

忍び寄る老いに頭を悩ませていたファウスト博士(シモン)の前に、悪魔メフィスト(フィリップ)が現れる。
悪魔は、博士の悩みにつけ込み、魂を売り渡すよう説き伏せ、博士を若く美しい青年の姿に変えるのだった。

ジェラール・フィリップが、黒い髪を耳の上でピンと尖らせたメフィストの姿で登場し「ケケケケ」と、
異様な笑い声を立てるのだが、その美貌に似合わない怪演ぶりには思わず笑ってしまう。

ミシェル・シモンも、最初はヨボヨボの博士だったのが、今度は入れ替わりに愛嬌たっぷりの悪魔に変身し、
楽しそうに演技している様子がよく分かる。二人の知恵比べ、駆け引きがまた面白く、片時も目が離せない。

(監督)ルネ・クレール(Rene Clair)(出演)ミシェル・シモン(Michel Simon)
ジェラール・フィリップ(Gerard Philipe) ニコール・ベルナール(Nicole Besnard)
       

生けるパスカル(FEU MATHIAS PASCAL)1925年
のらくら兵(TIRE AU FLANC)1928年
坊やに下剤を(ON PURGE BEBE)1931年
牝犬(LA CHIENNE)1931年
素晴らしき放浪者(BOUDU SAUVE DES EAUX)1932年
上から下まで(DU HAUT EN BAS)1933年
アタラント号(L'ATALANTE)1934年
おかしなドラマ(DROLE DE DRAME)1937年
霧の波止場(LE QUAI DES BRUMES)1938年
旅路の果て(LA FIN DU JOUR)1939年
リゴレット(LE ROI S'AMUSE)1941年
貴婦人たちお幸せに(AU BONHUR DES DAMES)1943年
山師ボオトラン(VAUTRIN)1943年
トスカ(LA TOSKA)1944年
パニック(PANIQUE)1946年
流血の港(LA TAVERNE DU POISSON COURONNE)1947年
偽りの果て(NON COUPABLE)1947年
ファビオラ(FABIOLA)1948年
悪魔の美しさ(LA BEAUTE DU DIABLE)1949年
ピーカーブー(FEMMES DE PARIS)1952年
ウィーンの別離(PAR ORDRE DU TSAR)1954年
フランス式十戒(LE DIABLE ET LES DIX COMMANDEMENTS)1962年
港町(LE BATEAU D'EMILE)1962年
大列車作戦(THE TRAIN)1964年
老人と子供(LE VIEIL HOMME ET L'ENFANT)1967年 ベルリン国際映画祭最優秀男優賞
薔薇色のロレーヌ(LA MAISON)1970年
赤いトキ(L'IBIS ROUGE)1975年