ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)

生年月日 : 1887/12/24
出身地 : フランス/フィニステール県
没年 : 1951/08/16

パリの薬科大学で薬学を専攻し、卒業後は薬局に勤めたが、若い演劇人と交流するようになる。

その後、彼らと劇団を結成し、各地を巡業して歩き、舞台の経験を積んだ。

1933年、ジョン・バリモア主演の「トパーズ」で映画デビュー。

以後、舞台と並行して「女だけの都 1935」「どん底 1936」「舞踏会の手帖 1937」等、
数々の名作映画に出て、卓越した演技力と強烈な個性で、多くの印象的な役柄を演じた。





代表作品

    女だけの都(La Kermesse heroique)1935年(仏)

1616年、フランドルの小都市にスペイン特使が軍隊を率いて一夜を過ごしたいとの知らせが届く。
スペイン軍の乱暴を恐れた市長(アレルム)は一計を案じ、自分が急死したことにする。
男たちは家の中で喪に服していて、とてもスペイン軍の接待が出来ない、という珍案だった。

あきれた市長夫人(ロゼー)は町の女たちを指揮してスペイン軍歓迎の宴を開く。
もてなしに満足した特使とその軍は、一夜明けると整然と去って行った。

ルイ・ジューヴェは、スペインの従軍司祭という役柄で、市長の偽装死をタネに袖の下を
要求するなど生臭坊主ぶりを発揮している。

(監督)ジャック・フェデー(Jacques Feyder)(出演)フランソワーズ・ロゼー(Francoise Rosay)
アンドレ・アレルム(Andre Alerme)ジャン・ミュラー(Jean Murat)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)
       
       
    どん底(LES BAS-FONDS)1936年(仏)

親譲りの盗っ人ペペル(ギャバン)は、場末の木賃宿をねぐらにしている。彼がある屋敷に忍び込むと、
その主である男爵(ジューヴェ)は自殺を図ろうとしていた。
ペペルと男爵は意気投合してしまい、これをきっかけに男爵は、木賃宿の住人に加わるのだが…。

ゴーリキーの悲劇「どん底」の映画化だが、ルノワール監督は、結末をハッピーエンドにしてしまった。
原作の大幅な改変のため、おそるおそる許可を求めたところ、ゴーリキーはまったく異議をとなえず、
そのまま承諾したという。

底辺の住人が身を寄せる木賃宿が舞台だが、人生の吹きだまりの縮図というより、そこに到着する人々と、
そこから抜け出したいと願う人々の、出会いと交錯の場といった印象の強い映画である。

(監督)ジャン・ルノワール(Jean Renoir)(出演)ジャン・ギャバン(Jean Gabin)
ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)シュジー・プリム(Suzy Prim)ジュニー・アストル(Junie Astor)
 
       
       
    アリバイ(L'ALIBI)1937年(仏)

ナイトクラブで読心術のショーを行ったウィンクラー博士は、ショーの後、一人の米国人ギャングを撃ち殺す。

博士は、クラブで働く娘を買収し、自分のアリバイを証言させる。一方、博士の犯行と確信しているパリ警察
のカラス警部(ジューヴェ)は、彼のアリバイを崩そうと画策するのだが…。

不気味な存在感を漂わせる犯人役をシュトロハイム、眼光の鋭い老練な警部役をジューヴェが演じ、後半、二人の
対決シーンが見どころとなっている。この映画は後年のジューヴェの「刑事もの」を予告する作品でもある。

(監督)ピエール・シュナル(Pierre Chenal)(出演)エリッヒ・フォン・シュトロハイム(Erich von Stroheim)
ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)ジャニー・オルト(Jany Holt)アルベール・プレジャン(Albert Prejean)
 
       
       
      舞踏会の手帖(UN CARNET DE BAL)1937年(仏)べネチア国際映画祭最優秀外国映画賞

夫を亡くしたクリスティーヌは、若くして結婚したために青春時代の思い出がなかった。
ある日、自分が十六歳の時に社交界デビューした晩のことを綴った手帖を見つける。

そこに書かれていたのは、ダンスのパートナーを務めてくれた男性たちの名前。
クリスティーヌは二十年ぶりに、彼らの一人一人に会いに行くことを決意。
しかしある者は自殺し、ある者は犯罪者となり、かつての青年たちは変わり果てていた。

ルイ・ジューヴェの役どころは、レストランの悪徳経営者。昔愛した女がやって来て
自分に会いに来たのだと分り、昔女に口ずさんだヴェルレーヌの詩をささやいてみせる。
そのとき刑事が来て逮捕されてしまうのだが、これは女との鮮やかな別れ方の見本となった。

(監督)ジュリアン・デュヴィヴィエ(JULIEN DUVIVIER)
(出演)マリー・ベル(MARIE BELL)ルイ・ジューヴェ(LOUIS JOUVET)
 
       
       
    北ホテル(HOTEL DU NORD)1938年(仏)

パリの下町に建つ北ホテル。その一室で男女が心中を図る。ピストルで女を射った男は恐怖にかられ、
自分の胸に銃口を向けることが出来ない。

銃声を聞いて駆けつけた隣部屋の男エドモン(ジューヴェ)は、男を逃がしてやった。男は自首するが、
女も一命を取り留める。やがて傷は癒えたものの、行く当てのない彼女は、北ホテルで働き始める…。

北ホテルは、貧しい庶民向けの安宿で、そこには様々な人生が吹き溜まっている。心に傷を背負いながら、
癒しきれずにいる中年男。失業をはかなみ、心中を図ろうとする若い男女。パリをこよなく愛するカルネが、
ここに訪れる人々の悲喜こもごもを、パリ祭の華やかな賑わいの中に、哀愁を込めて描いている。

(監督)マルセル・カルネ(Marcel Carne)(出演)アナベラ(Annabella)アルレッティ(Arletty)
ジャン=ピエール・オーモン(Jean-Pierre Aumont)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)
       
       
    旅路の果て(La Fin du jour)1939年(仏)

舞台は没落した役者たちが集う老人ホーム。彼らは過去の栄光を誇りにして余生を送っている。
そこへ新しくサンクレール(ジューヴェ)という、かつて人気のあった老役者が入所してくる。

役者というのは、舞台で喝采を浴びた過去が忘れられない虚栄心の塊のような生き物である。
彼らはかつての栄光を夢見て大言壮語し、互いに中傷し、それゆえに悲劇を招いてしまう。

ある者は、舞台で台詞を忘れたことを苦に自殺を図る。またある者は、芝居と人生を同一視し、
最期は発狂して精神病院送りになる。虚栄心とは、まさに死に至る病いなのである。

(監督)ジュリアン・デュヴィヴィエ(Julien Duvivier)(出演)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)
ミシェル・シモン(Michel Simon)ヴィクトル・フランサン(Victor Francen)
       
       
    犯罪河岸(はんざいかし、Quai des Orfevres)1947年(仏)

シャンソン歌手ジェニー(ドレール)は、パリの下町育ち、男の浮気心をそそる色っぽさが自慢だ。
嫉妬深い夫のモーリス(ブリエ)は、ある日、妻ジェニーの浮気を疑い、浮気の現場に足を運んだ。

だがそこには、その浮気相手の死体が横たわっていた。後に、モーリスは妻から「殴って殺した」
と告白を受ける。モーリスは妻が警察に捕まるのを防ごうとするが…。

事件を担当するパリ警察のアントワーヌ刑事にルイ・ジューヴェが扮している。地道で執拗な捜査を
続ける一方、人情家でもある役どころを人間味たっぷりに演じ、独特の存在感を醸し出している。
本作はジューヴェ自身、戦後の刑事もの路線を方向付けた作品となった。

(監督)アンリ=ジョルジュ・クルーゾー(Henri-Georges Clouzot)
(出演)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)シュジー・ドレール(Suzy Delair)
ベルナール・ブリエ(Bernard Blier)シモーヌ・ルナン(Simone Renant)
       
       
    恋路(Une Histoire d'Amour)1951年(仏)

早朝、廃バスの中で若い男女の情死体が発見された。死因に疑問を持った刑事プロンシュ(ジューヴェ)は、
その動機を調べはじめる。
やがて彼は、若い二人が身分違いという理由で、周囲に追い詰められていったことを知るのだった。

映画では、大会社の令嬢と、そこで働く従業員の青年との若く純粋な恋が描かれる。だが身分の違う二人を
執拗に引き離そうとする親たちの卑劣なエゴイズムと無理解が悲劇を招いてしまう。

無理心中した若い男女を悼み「どんな愚か者でも親になるのは違法ではない」と、刑事に扮したジューヴェが
苦々しく呟く言葉が印象に残る。

(監督)ギイ・ルフラン(Guy Lefranc)(出演)ルイ・ジューヴェ(Louis Jouvet)
ダニエル・ジェラン(Daniel Gelin)ダニー・ロバン(Dany Robin)
 
       

トパーズ(Topaze)1933年
女だけの都(La Kermesse Heroique)1935年
マドモアゼル・ドクトゥール(MADEMOISELLE DOCTEUR)1936年
どん底(LES BAS-FONDS)1936年
フロウ氏の犯罪(MISTER FLOW)1936年
背信(FORFAITURE)1937年
アリバイ(THE ALIBI)1937年
舞踏会の手帖(UN CARNET DE BAL)1937年
俳優入門(ENTREE DES ARTISTES)1938年
ラ・マルセイエーズ(LA MARSEILLAISE)1938年
北ホテル(HOTEL DU NORD)1938年
旅路の果て(LA FIN DU JOUR)1939年
幻の馬車(LA CHARRETTE FANTOME)1939年
わが父わが子(UNTEL PERE ET FILS)1940年
幽霊(UN REVENANT)1946年
真夜中まで(ENTRE ONZE HEURES ET MINUIT)1947年
二つの顔(COPIE CONFORME)1947年
犯罪河岸(QUAI DES ORFEVRES)1947年
二百万人還る(RETOUR A LA VIE)1949年
クノック(Dr. Knock)1951年
恋路(UNE HISTOIRE D'AMOUR)1951年