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ラグナロクRagnarok(最終戦争)/終末の日/神々の黄昏
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北欧神話の最終章とも言うべきラグナロク。
積み重なった軋轢とゆがみが、きしみとともに終末を呼び、世界は紅蓮の炎となって終焉を迎えるのである。

最終戦争のもともとの原因は、ロキ(Loki)の悪意だった。

不死の神であるバルデル(Balder)に嫉妬したロキは、バルデルの弱点がヤドリギであるという秘密を知り、
その枝で矢を作る。ロキの矢は、バルデルを射抜き絶命させてしまう。


ロキはバルデルを死なせたあと、拘束された。

蛇がロキの顔に毒を滴らせるので、とうとう彼を気の毒に思った妻のシギュン(Sigyn)が蛇のロの下に皿を置き、
毒液を受け止めた。一方、地上では何もかもが邪悪に変わり始めていた。

世界の善と美の大いなる源であったバルデルが死んでしまったからだ。
これが終末の始まりであり、ラグナロクの前触れであった。

ある日、ロキはとうとう鎖から抜け出す。
他の多くの執念深い者たちとともに、彼は神々に挑戦し、戦う。

ロキの怪物の子供たち、つまり狼のフェンリル(Fenrir)、世界蛇のヨルムンガンド(Jormungand)、
さらに炎の巨人スルト(Surt)、冥界の女王ヘル(Hel)らが彼の味方につく。
ヘルは冥界から怪物の軍を率いて霜の巨人と炎の巨人も攻撃に加わる。

まもなく神々、巨人、小人族、人間、怪物と、事実上すべこての生物が戦いに巻き込まれる。
残忍な戦いが繰り広げられるが勝者はいない。善も悪も破壊される。

狼のフェンリルはオーディン(Odin)を飲み込んだあと、オーディンの息子ヴィーザル(Vithar)に殺される。
豊穣の神フレイ(Frey)は、ヴァルハラ(Valhalla)の英雄たちを率いて敢然と戦ったが、炎の巨人スルトの燃え盛る剣で斬り殺される。

さらに、雷神トール(Thor)は、世界蛇ヨルムンガンドと、戦神テュール(Tyr)は、冥界の猛犬ガルム(Garm)と、
アスガルド(Asgard)の番人ヘイムダル(Heimdall)は、ロキと、それぞれ戦って相討ちとなる。

アスガルドは焼けただれ、ミドガルド(Midgard)は炎で一掃され、天と地をつなぐ虹の橋ビフロスト(Bifrost)は崩れ落ちる。
火炎が世界樹ユグドラシル(Yggdrasil)の幹に巻き付いてひからびさせ、毒竜ニドホッグ(Nidhogg)でさえ、飛んでいる間に焼き殺される。

最終的に全世界には累々たる死体の山が築かれる。
どうにか生き残れるのは、炎の巨人スルト(Surt)と、世界樹ユグドラシルの枝の間になんとか隠れたひと組の人間と数頭の動物だけである。

スルトは死者の体で大きなかがり火を焚き、死者の間にほかに生き残ったものがいないことを確かめ、宇宙から永久に怪物や悪魔や妖精を取り除く。
破壊の炎は何年にもわたって燃え続け、大地は黒焦げとなって大海に沈み、大波がその上をおおう。

最終的に大地は再び姿を現し、もう一度緑豊かになる。
リーフ(Lif 生命)という男とリーフスラシル(Liftrasir 命を渇望する者)という女の人間のカップルが、ユグドラシルの枝の問から歩み出す。

ふたりは新たな家族となり、大地に再び人々を増やす仕事に着手する。
ユグドラシルの根は、もう一度ミーミルの泉(Mimir's well)から水を吸い込み、火炎は枝を萎れさせたが、木そのものは枯れず、再び緑の葉を茂らせる。

冥界で衰弱していた善と美の神バルデルは、盲目の兄弟ホズル(Hodur)とともに復活する。
バルデルは新たな宇宙の支配者となる。
生命は悪に汚染されることなく新たに始まる。

Myths&Legends (Philip Wilkinson)