ギリシア神話事典             あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 ら行  


ラーRa
古代エジプトの太陽神。
主聖所はギリシア人がヘリオポリス(Hliopolis 太陽の都)と呼ぶカイロ北東部にあった。
原初の海(Nun)から生まれると、最初の宇宙をつくり神や人間を支配したが、年老いると天空神ヌト(Nut)の背に乗って天空にのぼり、世界を創造した。
天空では毎日舟に乗って東から西へとめぐった。

創造者としてのラーは多くの神々と習合し、古王国時代から王によって最も崇拝されるようになり、中王国時代以後、全国的な神となった。
石で表わされた太陽光線すなわち巨大なオベリスクのかたちで崇拝され、現存するものとしては第 12王朝期のセソストリス1世(Sesostris I)が建てたものがある。

毒ヘビに巻かれた太陽円盤を頭上に載せた男、羊頭の男、聖蛇で飾られた円盤を頭に載せたタカの頭部をもつ男などの姿で表わされる。
(The Encyclopedia Britannica)


ライストリュゴンLaistrygon
ポセイドンとガイアの子。
巨大な身体と怪力を持ち、残虐で、人を喰らったといわれる。
オデュッセウスはトロイから帰国する途中、アイオロスの島に次いでライストリュゴン人(Laistrygones)の国を訪れた。
オデュッセウスは、この国の港に到着。三人の部下を偵察に送った。
彼らは都の門で水を汲んでいる乙女に会い、導かれてその家に行くと、その父親はただちに三人の中の一人を殺して食った。
残りの者は逃れたが、ライストリュゴン人たちがそのあとを追って港に来て、崖から岩を投げ落とし、12隻あった船の11隻を破壊した。
オデュッセウスの船だけは入江の端に泊めてあったので、破滅を免れた。
(オデュッセイア 第十歌 80-132)


雷霆keraunos(らいてい ケラウノス)
ゼウスの武器である稲妻の矢(Thunderbolt)。
ティタン戦争の際にキュクロプスから貰い受けた。
世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができるという。
(Apollodorus Library book1 chapter2 by Sir James George Frazer)


ラオコオンLaokoon
トロイの予言者。木馬の計の際、中に軍勢がいることをカッサンドラと共に見抜いたが、受け入れられなかった。
海辺でポセイドンに雄牛を犠牲に捧げようとしていると、ニ匹の大蛇が海から出てきて、彼のニ人の息子に巻きつき、助けようとしたラオコオンも一緒に締め殺されてしまう。
この蛇は、アテナが、彼が木馬の引き入れに反対したので、送ったといわれる。
(Thomas Bulfinch The Age of Fable Chapter28 The Fall of Troy)


ラオメドンLaomedon
トロイ王イロス2(Ilos)とエウリュディケ3の子。
父の跡を継いでトロイの王となり、ポセイドンとアポロンの両神に依頼し、市のまわりに堅固な城壁を築いてもらった。
しかし完成後約束した報酬を払わなかったため、アポロンは疫病を、ポセイドンは海の怪物をトロイに送ったので、困惑したラオメドンは神託に従い、
娘のヘシオネ(Hesione)を海岸の岩に縛りつけ、怪物のえじきにしようとした。
そこを通りかかったヘラクレスが怪物を退治し、ヘシオネを救ってくれたが、ラオメドンはこの娘の生命の恩人の英雄にも、
報酬として約束したゼウスの贈り物のニ頭の神馬を与えるのを拒否した。
怒ったヘラクレスは軍勢を率いてテラモンとともにトロイに攻め寄せ、市を攻略し、ラオメドンを、末子のプリアモスを除く息子たちとともに殺し、
プリアモスを後継者としてトロイの王位につけ、ヘシオネはテラモンの妻にしたという。
(アポロドロス 第ニ巻 5-9, 6-4)


ラクシュミ−(Lakshmi) → ドゥルガー


ラグナロクRagnarok(最終戦争)/終末の日/神々の黄昏
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【内容】 アース神族(Aesir)と巨人族(jotun)との最終戦争

【日時】 世界の終末の日

【場所】 神国アスガルド(Asgard)巨人国ヨトゥンヘイム(Jotunheim)など九つの世界

【原因】 巨人族ロキ(Loki)は、主神オーディンの息子バルデル(Balder)を殺害した罪で神々により
         岩につながれたが、その報復として巨人族の兵を引き連れ、神々の国に攻め入った。

【経過】 太陽は暗くなり、星は消え、世界樹ユグドラシル(Yggdrasil)は炎に包まれ、
         大地とともに海中に没した

【勝敗】 アース神族は、ほとんどが討ち死に、巨人族は全滅した

【その後】 炎が鎮火し、大地が再浮上、そして新たな世界が生み出された

【生き残った神】 オーディンの子バルデル(Balder)、トールの子モージ(Modi)マグニ(Magni)など
                 数体の神が蘇り、人間も男女一組だけ生き残った




北欧神話の最終章とも言うべきラグナロク。
積み重なった軋轢とゆがみが、きしみとともに終末を呼び、世界は紅蓮の炎となって終焉を迎えるのである。

最終戦争のもともとの原因は、ロキ(Loki)の悪意だった。

不死の神であるバルデル(Balder)に嫉妬したロキは、バルデルの弱点がヤドリギであるという秘密を知り、
その枝で矢を作る。ロキの矢は、バルデルを射抜き絶命させてしまう。

彼はバルデルを死なせたあと、拘束された。

蛇がロキの顔に毒を滴らせるので、とうとう彼を気の毒に思った妻のシギュン(Sigyn)が蛇のロの下に皿を置き、毒液を受け止めた。
一方、地上では何もかもが邪悪に変わり始めていた。

世界の善と美の大いなる源であったバルデルが死んでしまったからだ。
これが終末の始まりであり、ラグナロクの前触れであった。

ある日、ロキはとうとう鎖から抜け出す。
他の多くの執念深い者たちとともに、彼は神々に挑戦し、戦う。

ロキの怪物の子供たち、つまり狼のフェンリル(Fenrir)、世界蛇のヨルムンガンド(Jormungand)、
さらに炎の巨人スルト(Surt)、冥界の女王ヘル(Hel)らが彼の味方につく。
ヘルは冥界から怪物の軍を率いて霜の巨人と炎の巨人も攻撃に加わる。


ラグナロク



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ラケシスLachesis
運命の三女神モイラ(Moira)の一人。「支える者」の意。


ラケダイモンLakedaimon
ゼウスとタユゲテ(プレイアス Pleias)の子。スパルタ人の祖。
ラコニア王(Lakonia)エウロタス河神(Eurotas)の娘スパルテ(Sparte)(ナイアス Naias 水のニンフ)と結婚し、娘エウリュディケ4を得る。
エウロタスの死後、王国を継承し、ラコニアの首都は妻にちなんでスパルタと名付けた。
(アポロドロス 第三巻 10-3)


ラコニアLakonia
ギリシア、ペロポネソス半島南東部を占める地域。
古代ギリシアの都市国家スパルタが繁栄した土地であるが、前ニ世紀ローマ人に占領され、以後西ゴート、スラブ、ビザンチン、
フランク、オスマン帝国、ベネチアなどの支配、侵入を受けた。
1821年に始ったギリシア独立戦争に際しては、この地の住民が大きな役割を果した。
現在この地域にラコニア県が設置されている。
古代遺跡のほか、新石器時代にさかのぼる遺跡が各地で発掘されている。
(The Encyclopedia Britannica)


ラダマンティスRhadamanthys
ゼウスとエウロペ2の子。ミノスとサルペドンの兄弟。
後にクレタ王アステリオン(Asterion)がエウロペ2を娶り、彼女の三人の子はこの王に育てられた。
アステリオンの死後、ミノスが王位を継ぐと、クレタの法の制定にあたって、知恵と正義により名声を得た。
死後は、ミノスおよびアイアコスとともに、冥界で死者を裁く裁判官の役に任じられたとされる。
(アポロドロス 第三巻 1-2)


ラピテース族Lapithai
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テッサリア地方ペネイオス河(Peneios)流域に居住する部族。河神ペネイオス(Peneios)を祖とする部族で、
武勇にすぐれ、アルゴ船遠征や、カリュドンの猪狩り、トロイ戦争にも参加している。ラピタイ人。

(アルゴ船遠征参加者)
カイネウス(Kaineus)モプソス(Mopsos)ポリュフェモス2(Polyphemos)ペイリトオス(Pirithous)
コローノス(Koronos)

(カリュドンの猪狩り参加者)
カイネウス(Kaineus)モプソス(Mopsos)ペイリトオス(Pirithous)

(トロイ戦争参加者)
レオンテウス(Leonteus)ポリュポイテース(Polypoites)

(The Encyclopedia Britannica)
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ラビュリントスLabyrinthos
ミノスの迷宮。ミノタウロスを閉じ込めたダイダロス作の迷宮。



ラーマーヤナRamayana
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「ラーマーヤナ」は、古代サンスクリット語で書かれたインドの二大叙事詩のひとつであるとともに、ヒンドゥー神話の重要なテキストである。

ここにはアヨーディヤー(Ayodhya)の王子でヴイシュヌ(Vishnu)の化身であるラーマ(Rama)の成長から、彼が国外追放を経て妻シーター(Sita)を
魔王ラーヴァナ(Ravana)の手中から救い出すまでの物語が描かれている。
この叙事詩は主要登場人物の描写を通して、忠誠、王権、献身的愛情、義務といった美徳を激賞している。


ラーマーヤナ


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ラミアLamia
胴体は女で、手足は驢馬の怪物。淫乱のシンボル。
海神ポセイドンの息子ベロス(Belos)とその母リビュエ(Libye)の娘。
ゼウスに寵愛されたために、ヘラによって醜い怪物にされた。
オデュッセウスが漂流しているときに水夫たちを食べてしまった怪物スキュラ(Skylla)は、ラミアの娘であるとされる。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


ラムセス2世RamsesII   [生没年未詳]
古代エジプト第19王朝3代目の王(在位前1204−前1237)。
エジプト史上第の治世期間を記録し、ラムセス王朝の黄金時代を築いた。
カルナック神殿(Karnak temple)、アブ・シンベル神殿(AbuSimbel)、ラメッセウム(Ramesseum 葬祭殿)をはじめエジプト各地に多くの神殿、
オベリスク、宮殿、巨像などを増築、建立し、その権勢と力のほどを示した。
(The Encyclopedia Britannica)



ランスロットLancelot
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仏領ベンウィック(Benwick)のバン王(King Ban)と妃のエレイン(Elaine)の間に生まれた。
父の死後、母親によって湖のほとりに置き去りにされたところを、「湖の乙女(Lady of the Lake)」にひろわれ、育てられた。
長じてアーサー王(King Arthur)の信望あつい「円卓の騎士(Knights of the Round Table)」となった。

バン王は、アーサー王の忠実な同盟者だったが、宿敵クローダス王(King Claudas )の猛攻を受け、妻子と共に城を抜け出す。
しかし、炎上する城を見て悲嘆のあまり命を落としてしまう。

そのとき、一人の女性が幼い王子(ランスロット)を湖の中へと連れ去って行く。
この女性は「湖の乙女」と呼ばれる女王で、魔術師マーリン(Merlin)の弟子にあたるヴィヴィアン(Vivian)であった。

以後、ランスロットは湖の妖精たちに養育され、常人を越えた知恵と勇気、そして武芸を身につけた。
このため、彼は「湖の騎士(Lancelot of the Lake)」と呼ばれることになる。

18歳になったランスロットを、ヴィヴィアンは、アーサー王の宮廷へ連れていき、騎士の資格を得られるように願い出る。

ランスロットは、姿・形も気品に満ちて美しく、武芸に秀で、礼儀作法もかなったりっぱな若者だった。
そのため、多くの女性から熱い眼差しが注がれることになった。

なかでも王妃ギネヴィアの心は、ランスロットが王から騎士の称号を得た瞬間から惹きつけられてしまう。
これが後々、円卓の騎士たちに災いをもたらすことになる。

アーサー王への忠誠と、王妃ギネヴィアへの愛で板挟みとなったランスロットは、アーサー王の右腕として数々の武勲を立てていた。
しかし、王妃ギネヴィアとの密会を続け、それは宮廷中の噂になっていった。


ランスロット


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ランパデスLampades
ランパドLampad(単数)冥界のニンフ。
ヘルメスが冥界へと死者を導くのを手助けしている。
彼女らは時折、紫の炎を燃やす松明を掲げているという。
おもなランパドに、ステュクス(Styx ステュクス河)、オルフネ(Orphne アケロン河 Acheron)、ゴルギュラ(Gorgyra アケロン河)、
メンテ(Menthe 嘆きの河 コキュトス Kokytos)、レテ(Lethe 忘却の河)がいる。
(THEOI Greek Mythology Encyclopedia, THE CLASSES OF NYMPH)


リアンノンRhiannon
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ウェールズ神話「マビノギオン」(Mabinogion)に登場するヒロイン。
リアンノンという名は「偉大な王妃」を意味する「リガントナ」(Rigantona)に由来する。

ダヴェド国(Dyfed)の大公ブイス(Pwyll)は、武勇に優れた有能な為政者だった。
ある日、プイスがアルベルスの丘(Albers)に座っていると、白くて大きな馬に乗ったリアンノンが現れる。

すぐに求愛しようと思い立ったプイスが慌てて彼の馬を走らせても、一向に追いつけない。
追いかけるのを諦め、リアンノンを呼ぶと彼女は立ち止まり、求愛に応じたという。

まもなくふたりには息子が生まれたが、息子はその夜のうちに何処となくさらわれていってしまう。
責めを負わされることを恐れた侍女たちは、リアンノンが息子を殺したと告発した。

ブイスは妻を馬のように四つんばいにさせて、誰であろうが通りかかった者に乗せようと申し出ねばならないという罰を与えた。

一方ブイスが隣領の貴族を訪ねたところ、貴族の馬小屋では不思議なことに子馬が何頭もいなくなっていた。
馬小屋の外で番をし、子馬を盗んでいた怪物を捕まえ、奮闘の末にその腕を切り落とした。

馬小屋に戻ると、プイスは自分の息子がわらの上に横たわっているのを見つけた。
彼は息子をリアンノンのもとに連れ帰った。

リアンノンはいわれなき罪から解放され、「心配から解き放たれた」という言葉から、息子をプリデリ(Pryderi 心配)と名づけた。
Myths&Legends(Philip Wilkinson)
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リグ・ヴェーダRigveda
インド最古の文献である4つのヴェーダの一つ。
リグとは「讃歌」、ヴェーダとは「知識」の意である。

この「知識」とは、近代西洋でいう「科学的知識」とは意味内容を異にしている。
ヴェーダ文献は、神々への讃歌、神話的記述、祭式の諸規定など、宗教的・儀礼的な内容を基本としている。

そこに現れた宗教観念や儀礼体系を「ヴェーダの宗教」、ないしは「バラモン教」(Brahmanism)と呼んでいる。

ヴェーダは、古い順に、「サンヒター」(Samhita 本集)、「ブラーフマナ」(Brahmana 祭儀書)、「アーラニヤカ」(Aranyaka 森林書)、
「ウパニシャド」(Upanishads 奥義書)から成る。
狭義にはサンヒターのみをヴェーダと呼ぶことが多い。

サンヒターは、「リグ・ヴェーダ」(讃歌)、「サーマ・ヴェーダ」(Samaveda 歌詠)、「ヤジュル・ヴェーダ」(Yajurveda 祭詞)、
「アタルヴァ・ヴェーダ」(Atharvaveda 呪詞)の4つから構成されている。

「リグ・ヴェーダ」は、全10巻、1028篇の讃歌から成り、紀元前1200年頃に作製されたと推定され、主として暗誦によって後代に伝えられた。

その内容は、古代詩人が自然現象を神格化し、その諸神に対して捧げた宗教的讃歌が主体となっているが、さらに婚姻、葬送、家畜の増殖、降雨と豊かな収穫、
天地創造に関する哲学詩、戦勝の歌などと多岐にわたり、古代インドの社会、生活、思想、歴史などを断片的に伝えている。

ヴェーダは、聖仙(Rishi)が霊感によって天から聴き取った啓示であり、ある特定の作者により作られた作品ではない。
人工物でない以上、滅びることはないとの考えから、ヴェーダは「始めも終わりもないもの」、すなわち永遠の存在とされたのである。 → アーリア人
古代インドの思想(山下博司)


リベルタスLibertas
古代ローマの自由を神格化した女神。
自由民の権利の守護者として前238年、アウェンチヌス丘(Aventine Hill)上に神殿を与えられ、祭祀においてはユピテル(Jupiter)と結びつけられた。
片手に月桂樹の枝を持った姿に表わされる。
(The Encyclopedia Britannica)


リムノス島Lemnos
エーゲ海北部の島。火山島で温泉があり、火と鍛冶の神ヘファイストス(Hephaistos)の信仰の地として知られる。
イリアスで、ヘファイストス自身が語るには、父ゼウスによってオリンポス山から真っ逆さまに突き落とされて、落ちた場所がリムノス島だったという。
神話では、アルゴ号遠征隊の最初の寄港地とされ、島の夫たちがトラキアの女性たちに夢中になって、相手にされなくなった妻たちは
その復讐に島中の男性を殺したという言い伝えがある。BC146年にギリシアが共和制ローマの属州となり、リムノス島もローマ領となった。レムノス島
(イリアス 第一歌 593,アポロドロス 第一巻 9-17)(The Encyclopedia Britannica)


リュケイオンLykeion
BC335年、アリストテレスがアテネ北東郊外に開設した学園。
BC343年、アリストテレスは、マケドニア王フィリッポス2世(Philip II)に招かれ、
王子アレクサンドロスの家庭教師を7年間つとめた。
アレクサンドロスが王位継承して後、東方遠征に出発する前年のBC335年、
アリストテレスはマケドニア支配下になったアテネに戻り、リュケイオンを開設した。
アレクサンドロス大王の支援を受け、多くの書物を収集した図書館を備えた高度の研究機関であり、後世の本格的な図書館の先駆ともなった。
(The Encyclopedia Britannica)


リュコスLykos
1 ボイオティアのヒュリア王(Hyria)ヒュリエウス(Hyrieus)とクロニア(Klonia ナイアス Naias 水のニンフ)の子。
テバイ王ニュクテウス(Nykteus)の弟。
(一説では、スパルトイ Spartoi のクトニオス Chthonios の子。アポロドロス 第三巻 5-5)
ニュクテウスの娘アンティオペ(ナイアス Naias 水のニンフ)を虐待したため、彼女の子、アムピオンとゼトスに殺された。

2 小アジアのマリアンデュノイ人(Mariandynos)の王。

3 ポセイドンとケライノ(Kelaino)(プレイアス Pleias)の子。


リュディアLydia
古代アナトリア(Anatolia 現トルコ)の南西部を中心に栄えた国家。
世界で初めて硬貨(コイン)を導入したことで知られる(エレクトロン貨 Elektron 琥珀の意)。
(The Encyclopedia Britannica)


リリスLilith
旧約聖書 (創世記1‐27) によれば、神によってアダムとともに土から創られた最初の女性であった。
しかし彼女は自尊心が強く、性格の不一致からアダムのもとを去り、紅海沿岸に移り住んでしまった。
それを知った神は、三人の天使を派遣してアダムのもとへ戻るようにリリスを説得するが、彼女は頑として応じなかった。
結果、諦めた神はリリスの代わりにアダムの肋骨から従順なイヴを創り、それをアダムの伴侶にしたのだという。

アダムのもとを去った後、リリスは数多くの悪魔と交わることで膨大な悪魔の子供を生みだした。
彼女と交わった悪魔は、ルシファー (Lucifer) や サマエル (Samael) であり、リリスは悪魔たちの女王として知られるようになった。
リリスの子供たちは「リリン (Lilin)」と呼ばれ、インキュバス (Incubus)、サキュバス (Succubus) としばしば同一視された。
母親のリリス同様に妖艶な悪魔の子供たちは、禁欲的なキリスト教徒を大いに苦しめたという。
Eve and the Identity of Women (Christopher L. C. E. Witcombe)


リンゴApple
インド・ヨーロッパの文化圏に伝わる伝説では、西方にある多くの女神の楽園には、永遠なる生命のリンゴがなっていたといわれる。

ケルト人は西方の楽園をアヴァロン(Avalon リンゴの島)と呼んだ。
そこは死者たちの女王であるモリガン(Morrigan)が治めていた。
アーサー王が重傷を負ったときに回復のために連れてこられたのもアヴァロンであった。

ギリシア人は女神ヘラ(Hera)が西方に魔法のリンゴの園を持っていると言った。
そこでは「生命のリンゴの樹」が聖なる竜に守られているという。

北欧神話の女神イドゥン(Idun)は、西方に魔法のリンゴの園を持っていた。
そこでは神々がリンゴをもらって不死の身となったといわれる。

リンゴが、魔法の力を持つ果実なら、リンゴの樹も異界の樹である。

アイルランドの冒険譚「ブランの航海(Immram Brain)」では、フェヴァル王(King Febail)の息子ブラン(Bran)が、
異界の女性にリンゴの銀の小枝を渡され、「女人の国」の存在を教えられる。
王子ブランは同士を募り航海の旅に出かける。

海の彼方のその国は、花咲き乱れる常春の国で、病気も死もない不老不死の国、さらに、女人たちに囲まれた終わりなき歓楽が待っている「女人の国」であった。
やがて望郷の念にかられ、アイルランドに戻ってみると、すでに何百年も時が経ってしまっていたことを悟る。
彼らは岸の人々に、航海の一部始終を語った後、海の彼方へ消えていった。

ケルト人の信じた「異界のリンゴの楽園」とは、この世の果てにあり、あの世に旅立つ死者たちが赴くところと考えられていたのである。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)
The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Barbara G. Walker)


ルー Lugh
ケルト神話の英雄。ダーナ神族(Dannan)のキアン(Cian)とフォモール族(Fomorians)のエスニウ(Ethniu)の子。
医術・魔術・音楽・詩とあらゆる技能に秀で、美貌で勇敢な戦いぶりは後の英雄の原型となった。

ルーがアイルランドに現れたのは、ダーナ神族がフォモール族の支配下にあった頃である。
ダーナ神族の王ヌアダ(Nuada)の宮殿で、ルーは、魔法や武芸、芸術など自分の得意とする能力のすべてを披露した。
ヌアダ王は、ルーの実力を認め、フォモール族と戦うのに力を貸してほしいと頼んだ。

敵方のフォモール族の長は、ルーの祖父のバロル(Balor)であった。
まだルーが生まれる前のこと、バロルは自分がいずれ孫に殺されるだろうという予言を受けた。
これを恐れて、娘のエスニウをトオリィ島(Tory Island)の塔に閉じ込めてしまった。

しかしそこにキアンが密かに通うようになり、やがてルーが生まれてしまう。
ルーはキアンの兄弟である海神マナナン・マクリル(Manannan Mac Lir)のもとで戦士として成長し、バロルとの戦いの日を迎えたのだった。

バロルは目にした者すべてを死に至らしめるという邪眼(Evil Eye)を持っていた。
そこでルーは戦いの中、投石器を使ってバロルの目に石を投げつける。
バロルの目はそのまま頭の後ろまで貫通し即死してしまった。

ダーナ神族は全力をあげてルーのもとに戦い、フォモール族を壊滅させた。
ダーナ神族を勝利に導いたルーは、ヌアダ王の指名を受け、一族の指導者として王位に就いたのである。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)


ルクソール神殿Luxor Temple
カルナック神殿(Karnak Temple)の副殿であり、参道、塔門、中庭、大列柱廊、至聖所などがバランスよく配置されている。

途中で主軸が10度ずれているのは、神殿の正面を太陽の昇る東側に向けるためだったという。

現存する神殿の大部分は、新王国時代第18王朝のアメンホテプ3世(AmenhotepIII)と第19王朝のラムセス2世(RamsesII)の二人が建設したもの。
アメンホテプ3世の息子アクエンアテン王(Akhenaten)は、強力な神官団に支配されたアモン神(Amun)信仰を嫌いアマルナ(Amarna)に遷都。
神殿は荒れ果てたが、次王のツタンカーメン(Tutankhamen)が修復、一部を完成させている。

ヒッタイト(Hittites)と戦闘をまじえたカデシュの戦い(Battle of Kadesh)の場面がレリーフに描かれた第一塔門と、
高さ25mのオベリスクはラムセス2世の建立である。
対になっていたもう一本のオベリスクは、現在パリのコンコルド広場(Place de la Concorde)にある。

オベリスクの左奥にはラムセス2世の頭像が置いてある。
第一塔門前には元々6体のラムセス2世像があったとされ、そのうちの1体が頭の部分だけ残ったものと思われる。
(The Encyclopedia Britannica)


ルシファーLucifer
明けの明星を指すラテン語であり、光をもたらす者という意味をもつ堕天使の名である。
正統キリスト教、特に西方教会(カトリック教会やプロテスタント)において、堕天使の長であるサタンの別名であり、
魔王サタン(Satan)の堕落前の天使としての呼称である。
キリスト教の伝統的解釈によれば、ルシファーは元々全天使の長(Seraphim 熾天使)であったが、神と対立し、天を追放されて神の敵対者となったとされる。

「黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった」(イザヤ書 第14章12節)
「この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された」
(ヨハネの黙示録 第12章9節)
Alchemical Studies (C. G. Jung)


ルナ(Luna) → セレネ


ルーン文字Runes
北欧のゲルマン民族が3世紀頃から使用した古代文字。
神話ではオーディン(Odin)が創案したとされる。
この文字を彫ったものに呪術的な効果があると信じられたため、その言葉を呪文として唱えることも行われた。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


レアRhea
ガイアとウラノスの娘。 ティタン神族。
クロノスの妻となり、ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン、ゼウスを産んだ。
クロノスは自分の王座を奪われることを恐れ、、子供を次々に飲み込んだ。
しかし、ゼウスの時には、かわりに石をだまして呑ませ、ゼウスをひそかにクレタ島のイデ山中(Ide)で育てた。
(アポロドロス 第一巻 1-3,1-5,1-7)


レウクトラの戦いBattle of Leuctra
BC371年、ギリシアの盟主を目指したテバイ(Thebai)を中心とするボイオティア軍(Boiotia)が、
スパルタを中核とするペロポネソス同盟の軍勢を破り、テバイが覇権を握る契機となった戦い。
(The Encyclopedia Britannica)


レウケLeuke
オケアノスとテテュスの娘。(オケアニド Oceanid 海のニンフ)
冥界の王ハデスに見初められ、冥界に連れて行かれたが、彼女は完全な不死の神ではなかったため、死んでしまった。
これを悲しんだハデスは、レウケを白ポプラに変えた。
この木は、エリュシオンの野にあり、後にヘラクレスは難行の一つとして冥界を訪れた時、この木から冠を作ったという。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


レスボス島Lesbos
エーゲ海の北東部、トルコ沿岸に位置する島。
古代、この島では女性の同性愛が盛んであったといわれ「レズビアン」(Lesbian)の語が生じた。
さらにワインの産地であることから、当地では「レズビアン・ワイン」(Lesbian wine)という名称が一般化している。
レスボス島のワイン造りの歴史は古く、BC730年にはホメロスの作品に登場している。
(オデュッセイア 第10歌 235)(The Encyclopedia Britannica)


レダLeda
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アイトリア王(Aitolia)テスティオス(Thestios)とエウリュテミス(Eurythemis クレオボイア2 Kleoboia の娘)の娘。

スパルタ王テュンダレオス(Tyndareos)に嫁してクリュタイムネストラ、ティマンドラ(Timandra)、フュロノエ(Phylonoe)、
カストル(Kastor)を、また白鳥に化したゼウスに愛されてポリュデウケス(Polydeukes)、ヘレネを産む。

スパルタの王妃レダは、ある日侍女を伴って水浴びをしていた。
その美しさに目をとめたゼウスは、白鳥の姿になってレダの元に舞い降りた。

レダはそのあまりに美しい白鳥をみて思わず抱き寄せる。それがゼウスであることも知らずに。
こうしてゼウスは首尾良く想いを遂げた。

やがて月が満ちて、レダは二つの大きな卵を産み落とした。
その卵から二組の男女の双子が生まれた。

ゼウスの血を引く、ポリュデウケスとヘレネ。
人間の夫テュンダレオスの血を引く、カストルとクリュタイムネストラ。

このときゼウスが化けた白鳥が、はくちょう座に、ポリュデウケスとカストルは後に双子座の神話となった。

(アポロドロス 第一巻 7-10, 第三巻 10-5-7)

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レテLethe
忘却の河。
冥界の河の名で、死者はこの水を飲んでこの世の記憶を忘れるという。
(The Encyclopedia Mythica)


レトLeto
ティタン神族のコイオス(Koios)とフォイベ(Phoibe)の娘。
ゼウスの子を宿したことでヘラの怒りを買い、デロス島で双子のアポロンとアルテミスを産む。
それまで浮島だったデロスは、アポロンの誕生に貢献したことにより、四本の柱で繋ぎ止められることになった。
(アポロドロス 第一巻 2-2,4-1)


レプラコーンLeprechaun


レプラコーンは、いつでも片方の靴だけをつくっている靴屋の妖精である。

夜中に、何かを叩く音がすれば、それはレプラコーンがカナヅチを振るい、
靴を作っている音だとされている。

捕まえると、黄金のありかを教えてくれるが、たいてい黄金を手に入れることはできない。


ある男が、野原に隠されている黄金のありかを、レプラコーンから聞き出し、
その場所へ案内してもらった。

だが男は、シャベルを持ってこなかったので、目じるしとして
木のまわりに赤いリボンを結んだ。

男はすぐにシャベルを持って戻ってきたのだが、その場の光景を見て驚いた。

なんと、野原に生えているすべての木に、赤いリボンが結ばれていたのだった。


それ以来、アイルランドでは、レプラコーンのいたずらの被害にあわないように、

道のあちこちに 「レプラコーン出没注意!」 の標識が掲げられるようになった。  → 妖精

Carol Rose (Spirits, Fairies, Leprechauns, and Goblins: An Encyclopedia)



錬金術Alchemy
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錬金術は、科学の前段階ともいえる疑似科学の要素が強く、魔術的要素も大きいことから中世ヨーロッパにおいて大流行した。

錬金術の当初の目的は、文字通り卑金属(酸化されやすい金属。貴金属の反対語)から「金」を作りだすことにあり、水銀や硫黄が重要な役割を占めていた。

金は変質しない金属で、古代よりその価値を認められてきた。
それゆえ、権力の象徴であり、いつの時代でも人々はその美しさに魅せられてきた。
当時の諸侯や王族は、錬金術師に援助して、金の製造を研究させたという。

12−13世紀に入ると、キリスト教会に属する有能な聖職者たちが次々と錬金術に傾倒していった。
ロジャー・ベーコン(Roger Bacon)、アルベルトゥス・マグヌス(Albertus Magnus)たちである。

彼らが、金の合成に挑戦したのは、現世的利益を追求するばかりでなく、金というものが宇宙における完璧さを象徴しているからである。
ちなみに卑金属を金に変える力を持つ物質を、「賢者の石」(Elixir)と称した。

中世後期の15世紀頃から、卑金属から貴金属、とくに金を作り出す試みである錬金術は、そのまま「不完全な人間(有限)」を
「完全(無限)」のものとする「秘儀」の発見につながると考えられるようになった。

すなわち、人間の「知恵」と「精神」の力によって、肉体の「束縛」を破り「不老不死の実現」を目的とする体系へと発展したのである。

特に高等な錬金術師は、霊魂の錬金術を行い、「完全なる知」(Gnosis グノーシス)を得ることにより、神と一体化すると考えられた。

この段階にいたった人間は、生きながらにして救われており、最後の審判で裁かれる必要すらなかった。
錬金術は一種の宗教や神秘思想に変質を遂げていったのである。→ グノーシス主義
魔法事典(山北篤)
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レムノス島(Lemnos)→リムノス島


ロキLoki
「世界を終わらせる者」の意。不和と悪事をたくらむ火の神。
とはいえ邪悪一辺倒ではなく、ときには神々を助けた。

たとえば、雷神トール(Thor)の鎚が巨人スリュム(Thrym)に盗まれた際には、取り戻すために策略を企てている。
美の女神フレイヤ(Freyja)と結婚させてくれたら喜んで鎚を返すとスリュムが言うので、ロキはフレイヤに化けたトールに花嫁衣裳を着せ、結婚式に行かせた。
式の前にスリュムが鎚を取り出すと、トールはそれを奪い返した。

ロキは、神々の宿敵であるヨトゥン(Jotunn 巨人族)の血を引いている。
巨人族の血を引きながらもオーディンの義兄弟となってアスガルドに住み、オーディンやトールと共に旅に出ることもあった。
しかし性格は気まぐれで、救済者にも悪霊にもなる両面価値的な神(Trickster)でもあった。

光の神バルデル(Balder)を「ちやほやされて目障り」という理由でバルデルの弟の盲目の神ホズル(Hodur)を騙して、ヤドリギの剣を手渡し、これを投げさせたのである。
その結果、バルデルはヤドリギに心臓を貫かれ、死んでしまった。

バルデルを死なせた罰として、ロキは息子のはらわたで縛られた。
女巨人のスカジ(skadi)が彼の上に蛇を置き、その毒が彼に滴り落ちるようにした。

ロキの妻シギュン(Sigyn)は彼に滴り落ちる毒液を器で受け止めていた。
しかし、満杯になった毒液を捨てるとき、受けるものいなくなるため毒液が彼に直接滴り、その度に苦痛のため地震が起きると言われる。

ラグナロク(Ragnarok 最終戦争)の時、ロキはシギュンのおかげで解放され神々に復讐するため巨人側につく。
ムスペルスヘイム(Muspellsheim)の巨人達を大船に乗せ、アスガルドに攻め入る。
ロキ自身はそこで、虹の橋の番人、ヘイムダル(Heimdall)と壮絶な戦いの末、相討ちとなって果てるのである。
Myths&Legends (Philip Wilkinson)


ロデRhode
ポセイドンとアムフィトリテ(Amphitrite ネレイス Nereis 海のニンフ)の娘。
太陽神ヘリオスと交わり、ロドス島民の始祖となった九人の息子(ヘリアダイ Heliadai ヘリオスの息子たちの意)、テナゲス(Tenages)、マカレウス(Macareus)、
アクティス(Actis)、トリオパス(Triopas)、カンダロス(Candalus)、オキモス(Ochimus)、ケルカフォス(Cercaphus)、アウゲス(Auges)、トリナクス(Thrinax)を産んだ。
(The Encyclopedia Mythica)


ロードス島Rhodos
古代ギリシア時代に繁栄したエーゲ海東方にある島。
BC408年ロードス市が建設された。
ヘレニズム時代(BC334〜BC30)には独立の貿易国として繁栄したほか、学問研究の中心地の一つとなり、世界七不思議の一つである巨像が造られた。
14世紀にも東方貿易の根拠地として栄え、1522年にはオスマン帝国領となった。
第二次世界大戦後の1947年よりギリシアに帰属。
(The Encyclopedia Britannica)


ロミオとジュリエットRomeo and Juliet
イギリスの劇作家シェークスピアの悲劇。全5幕。
1594年頃執筆、初版は 1597年の四つ折本 (クォート) 。

イタリアの戯曲家バンデッロ(Bandello)の物語に材を取ったアーサー・ブルック(Arthur Brooke)の長編物語詩「ロメウスとジュリエットの悲劇的な物語」
(The Tragical History of Romeus and Juliet)をもとに、ルネサンス時代のヴェローナ(Verona)を舞台として、名門モンタギュー家(Montecchi)の息子
ロミオと宿敵キャピュレット家(Cappelletti)の娘ジュリエットとの悲恋を描いた運命悲劇。

悲痛な結末にもかかわらず、若さに満ちあふれた華麗な劇となっている。
ロミオの友人マキューシオ(Mercutio)やジュリエットの乳母がいきいきと描かれている。
(The Encyclopedia Britannica)


ローレライLorelei
ドイツのライン川(Rhine)流域の民間伝承に登場する水の精。
その名と同じ名前を持つ岩に住み、ライン川のビンゲン(Bingen)近くで不思議なこだまを響かせながら美しい声で歌い、船乗りを誘惑して死に至らせたとされる。

しかし、彼女は大昔に存在していたのではなく、詩人クレメンス・プレンターノ(Clemens Brentano)が「ローレ・ライ(Lore Lay)」(1800年)に載せた物語の主人公である。
その後、ハインリヒ・ハイネ(Heinrich Heine)が彼女のことを詩に歌い上げ、その人気を通じてこの話はイングランドでさらに広く知られるようになった。

そして、この話を信じた多くの人々が観光でやってくるようになり、この場所は今や有名な観光地となった。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)


ロンギヌスの槍Lance of Longinus
ローマ帝国の百卒長ロンギヌスがイエスの死を確認するためにその脇腹を突いたとされる槍。
ロンギヌスは盲目で、イエスの脇腹を槍で刺した際にイエスの血が眼に入り、視力を取り戻したという。

この事から彼は改心、その後洗礼を受けたといわれる。
その後、ロンギヌスは殉教者として崇敬され、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂 (St. Peter's Basilica) には槍とともに「ロンギヌス像」が飾られている。

この槍には「所有するものに世界を制する力を与える」との伝承があり、八世紀の西ローマ皇帝カール一世 (Charles I) は、槍を手にしてから連戦連勝を重ねたとされる。
しかし、あるとき槍をライン河に落としてしまい、直後に死亡したといわれる。

またアドルフ・ヒトラーもウィーンで槍の霊感を受け、世界征服の野心を抱いたとされている。
彼は1938年、オーストリアを併合、ハプスブルク家が所有していたロンギヌスの槍を奪取した後、ポーランドに侵攻し、第二次世界大戦の口火を切って落とした。

その後ヒトラーは快進撃を続けるが、1945年4月、アメリカ軍がニュルンベルク (Nurnberg) の教会に保管されていたロンギヌスの槍を奪還。
聖槍を失ったヒトラーは、それからまもなく拳銃で自決している。

ロンギヌスの槍は、現在上記のサン・ピエトロ大聖堂に保管されているといわれているが公開はされていない。
The Concise Oxford Companion to English Literature,edited by Dinah Birch and Katy Hooper


ワイバーンWyvern/Wivern
ヨーロッパの伝説と伝承に登場する、竜 (dragon) の頭と蛇の体とコウモリの翼と2本の足をもつ魔物。
長いシッポの先にはトゲをもつ。
毒蛇を意味するヴァイパー (viper) がその名の由来とされる。
ヨーロッパでは「強い敵意」を表す紋章の図柄に多く使用されし、戦時中や軍隊などで使われたという。
Carol Rose (Giants, Monsters, and Dragons)




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