私の青空 2000年(平成12年) ドラマ傑作選


物語の舞台は、マグロ漁で知られる青森県大間町。
高校を卒業して地元で働くなずな(田畑智子)は、高校の先輩・健人(筒井道隆)と結婚。
ところが結婚式の最中に、突然ひとりの女性が乱入し、花婿の健人を連れ去ってしまう。
目のけがでボクサーの道を断念した健人を再起させるために、ジムの一人娘・千代子が
まるで映画のワンシーンさながらに逃走劇を図ったのだった。
途方にくれるなずなの父・辰男(伊東四朗)、ひたすらわびる健人の父・譲二(宝田明)に、
さらに追い打ちをかける「おなかに赤ちゃんが…」というなずなの告白。
周囲の反対と、健人への恨みに揺れるなずなだったが、未婚の母として出産することを決意。
やがて「東京で健人を見た」という情報を得たなずなは、乳飲み子の息子を連れて東京に旅立つ…。
夫になるはずの男に逃げられたヒロインが、未婚の母となって上京。さまざまな困難を乗り越え、
自分の道を模索していく姿を描く。
結婚をせずに子供を産んだいわゆる「未婚の母」は、かつては社会的な偏見や差別の対象であった。
未婚の母になる様な娘を育てたとして、その両親もまた白い目で見られることが多かったのだ。
とりわけ、ヒロインの父親は、昔気質の頑固親父であり、未婚のまま子供を産むことに猛反対する。
上京したヒロインが、未婚の母ゆえに、アパート一つ借りるのにも苦労する厳しい現実も描かれる。
こうした「未婚の母」のイメージが変化したのは、1990年代になってからだ。未婚の母であることを
堂々と表明する芸能人や著名人が現れ、女性の生き方のモデルとされるようになった。
1990年代後半には、結婚しないことを積極的に選択する意味合いの「シングルマザー」という言葉が
新聞や雑誌に多用されるようになった。
本作「私の青空」は、このような社会状況のなかで制作されたのだ。
脚本の内館牧子は「自分の人生なのだから、人それぞれ自分の好きに生きたらいい」と語る。
「結婚するか、しないか」「子を産むか、産まないか」は、個人の自由。
それならば「結婚をしないで、子を産む」「結婚をしないで、自分の夢を追いかける」
これらもまた、個人の自由な選択のうちではないだろうか。
(制作)NHK(脚本)内館牧子
(配役)北山なずな(田畑智子)北山辰男(伊東四朗)北山珠江(加賀まりこ)北山太陽(篠田拓馬)村井健人(筒井道隆)
村井譲二(宝田明)利根川千代子(深浦加奈子)田中伝吉(八名信夫)高島勝太(阿藤快)バズーカ利根川(渡辺哲)
