朝(あした)の並木路 1936年(昭和11年) 邦画名作選 |
田舎の生活に飽きた千代(千葉早智子)は、華やかな都会に憧れ、丸の内で働く友人
を頼って上京するのだが、実はその友人は、丸の内のカフェ(酒場)の女給だった。
現実の厳しさを知った千代は、仕方なく、その友人と一緒に女給として働き出す。
ある日、千代は、カフェの客で丸ビルで働く小川と知り合い、お互いに好意を持つ。
やがて、千代は、小川にほのかな恋心を寄せるようになり、彼との結婚を夢見る。
ところがある時、小川の転勤が決まり、これでお別れだと千代に告げるのだった。
お客と女給の関係は、しょせんそんなものだ。千代は再び、現実の厳しさを知る。
千代は、別れ際に彼が残した連絡先のメモを、川に投げ捨ててしまう。女給を辞め、
新たな仕事を探す決意をした彼女は、晴れ晴れとした表情を浮かべるのだった。
成瀬巳喜男のオリジナルシナリオ。千葉早智子が、モダンな田舎娘を演じている。
ラストは、恋は実らないものの、清々しく前向きな終わり方で、千葉早智子の明るさ、
爽やかさが印象的だった。
翌年、彼女と結婚する成瀬が、愛情を込めて演出していたことが伺える作品である。
相手役の小川を演じた大川平八郎は、1933年(昭和8年)PCLに入社。千葉早智子と
コンビを組んで「妻よ薔薇のやうに」「噂の娘」など、主に成瀬作品に出演。
大川は、英語が堪能で、ハリウッドで活躍する国際スターとしても知られる。
戦後の代表作としては、ウィリアム・ホールデン主演の「戦場にかける橋」に
日本人将校という重要な役柄で出演している。
製作 P.C.L.映画製作所
監督 成瀬巳喜男
配役 | 千代 | 千葉早智子 | カフェのマダム | 清川玉枝 | |||||||||
父 | 御橋公 | その旦那 | 三島雅夫 | ||||||||||
母 | 山口ミサヲ | 女給・茂代 | 赤木蘭子 | ||||||||||
小川 | 大川平八郎 | 房子 | 清川虹子 |