痴人の愛 1967年 (昭和42年) 邦画名作選 |
河合譲治(小沢昭一)は、ある工場に勤める技師だ。
酒もギャンブルもやらない、真面目一徹な男である。
あるとき喫茶店で、18歳の少女・ナオミ(安田道代)を見初める。
水商売を営むナオミの家は貧しく、両親は娘にさほど愛情を持っていない。
養女に迎えたいと申し出る河合に、両親はいい口減らしになると考え、快諾する。
河合は、ナオミに英語やピアノを習わせ、教養のある女性に育てようとする。
しかしナオミには、そんな「教養」は苦痛でしかない。
それより綺麗な洋服や宝石で着飾り、贅沢に遊び歩いたりしたいのだった…。
文豪・谷崎潤一郎の原作をもとに、奔放で淫蕩なヒロイン・ナオミの愛と性を、
増村保造が、現代風の新たな女性像に置き換えて描きあげた衝撃作。
初めは無垢な少女だったナオミは、徐々に本性を現し、あばずれの小悪魔に
変身していくのだった。
やがて彼女は、魔性の魅力を放って、様々な男たちとの享楽に溺れていった。
嫉妬に狂った河合は、ナオミと絶縁する。しかし、嫉妬心は未練を何倍にも
もどかしくさせ、どうしてもナオミが忘れられない。
一方、自由奔放に見えるナオミだが、実は、わがまま放題を言える河合に
深く依存していることが、次第に明らかになってくる。
最後に二人は和解し「お馬さんごっこ」をして「遊ぶ」のであった。
ヒロイン・ナオミを演じた安田道代は、1965年(昭和40年)勝新太郎に見込まれ大映入社。
その美貌から山本富士子の再来と嘱望され「座頭市」「兵隊やくざ」などで勝新と共演した。
本作「痴人の愛」は、清純派から大きく羽ばたき、演技派女優としての転機となった作品である。
大映倒産後は役に恵まれず、一時期、映画界から姿を消したが、1976年、実業家の大楠祐二と結婚。
その後は大楠道代の名で「ツィゴイネルワイゼン」など話題作に出演、数々の女優賞を手にしている。
製作 大映
監督 増村保造
配役 | 河合ナオミ | 安田道代 | 浜田伸夫 | 田村正和 | 波川課長 | 早川雄三 | ||||||||||||||
河合譲治 | 小沢昭一 | 熊谷政太郎 | 倉石功 | 花村医師 | 内田朝雄 |