復活の日 1980年(昭和55年) 邦画名作選
米ソ冷戦下、密かに開発された細菌兵器MM−88を積んだ輸送機がアルプスの山中に墜落。
雪解けの春を迎え、増殖を始めた菌は新型インフルエンザ「イタリアかぜ」として世界中に蔓延。
猛威を振るう謎のウイルスに、人類はほとんど滅亡寸前となる。
このウイルスは超低温では機能せず、南極大陸に滞在していた観測隊員が人類の生き残りとなった。
だがアメリカ東部に大地震が起きる可能性があり、それは核ミサイルの発射を誘発するものだった。
小松左京の同名小説を、高田宏治が脚色、深作欣二が映像化したSF超大作。
細菌兵器により人類はほとんど滅亡、南極に残されたわずかな人々の生きのびる姿を描く。
原作は、1964年(昭和39年)小松左京の書き下ろし作品。当時は、米ソ冷戦の真っただ中である。
第二次世界大戦の戦禍のなかで思春期を過ごした小松左京は、本土決戦で命を落とす覚悟をしていた。
しかし思いがけず生き残り、終戦を見届けた彼を待ち受けていたのは、平和な時代ではなかった。
1962年(昭和37年)にはキューバ危機によって核戦争一歩手前までいった。第三次世界大戦が勃発すれば、
今度こそ世界が滅んでしまうかもしれない。そうした危機感のなか、本作品の執筆が始まったという。
作品では、人類はほとんど滅びてしまうが、何かが少しでも違えば、誰かがもう少しだけ理知的に
振る舞っていれば、違った結末があったのではないかと思わされる。
小松左京は、原作の後書きでこう述べている。
「人類は、断崖の端に立つ自分を発見したとき、理知的に振る舞うことが出来るだろう」
作者は、断崖に追い詰められた人類の姿を描き出すことで、彼らの知性と人間性とに希望を託したのである。
製作 東宝
監督 深作欣二
You are Love (Janis Ian)