逆流   1924年(大正13年)     邦画名作選
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落ちぶれた武士・南條三樹三郎(阪東妻三郎)は、お家再興を目指し、文武両道に励む。

だが、母親が家老の息子・早水源三郎の馬に蹴り殺され、運命が狂う。

さらに、城勤めの姉が源三郎の手に掛かり自害。

また、思いを寄せる娘・操(マキノ輝子)は、憎き源三郎の妻に。

三樹三郎は、浪人に身を堕とし、酒におぼれる日々を送る。


七年後、三樹三郎が浜辺にいると、一艘の舟が浜に着く。

あろうことか、源三郎と操の夫婦ら一行が降りてきて、海岸を歩き出すではないか。

恨み重なる源三郎へと殺到する三樹三郎と、押し留めようとする一行。

海岸はたちまち血の修羅場と化す。

ついに三樹三郎は、源三郎へとどめを刺し、母と姉の仇を討つ。




新進気鋭のシナリオ作家・寿々喜多呂九平の脚本を監督・二川文太郎が映画化。


家老の息子・源三郎に母を轢き殺され、姉を弄ばれるという理不尽な仕打ちを受け、

さらに恋に破れた嫉妬の炎を燃やす三樹三郎の怒りは、ついに海岸で炸裂する。

その激怒の刃で源三郎を刺したのだが、三樹三郎の心は、何故か晴れなかった。


阪妻の演じる三樹三郎は、純粋ゆえに悩み、心ならずも反逆者になっていく若侍である。

理不尽な状況に苦悶し、報われない恋に葛藤し、ついに身を持ち崩す。


この屈折した心境と、抑えようのない反逆精神が、阪妻の立回りに悲壮な美を加えている。

ラスト、虚無的な心理を絶妙に表現したその絶望のポーズは、阪妻開眼と高く評価された。


 
 
 
  製作   東亜キネマ

  監督   二川文太郎  原作 寿々喜多呂九平

  配役    南條三樹三郎 阪東妻三郎 南條の姉お富美 清水れい子
      早水源三郎 片岡紅三郎 南條の母 別所益枝
      娘・操 マキノ輝子 剣客倉橋十平太 嵐冠三郎

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