判決   1962年(昭和37年)       ドラマ傑作選

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岡崎弁護士(佐分利信)が所長をつとめる雨宮弁護士事務所に弁護の依頼があった。


依頼内容は、料理屋で働く仲居が、自分に売春をさせて酒に溺れる父親を
思い余って殺してしまった、という尊属殺人案件である。


法廷で、井上弁護士(河内桃子)は、この父親の非道の数々を立証した上で
被告人の罪に情状酌量を求める。


この当時、尊属殺人は、刑法200条で死刑か無期懲役と定められていた。

普通の殺人であれば、執行猶予も期待できるのに、なぜ尊属殺人には、
それが許されないのか。




これは憲法14条に定める「人は法の下に平等」に違反するのではないか、
というのが弁護側の主張であった。



法律事務所を舞台にして、実際の裁判記録をもとに制作した社会派ドラマ。


佐分利信、仲谷昇、河内桃子、沢村忠雄の4人の弁護士が、裁判で直面した
社会問題や、矛盾を正面から掘り下げていくというストーリー。

憲法問題、差別問題、遺産相続など、シリアスなテーマが取り上げられた。


1960年代は、ドラマが社会矛盾を厳しく告発した時代であった。

それに伴って、そういった言論・表現を偏向とみなす圧力が強まり。
放送中止となる番組が相次いだ。


本作「判決」も、法制度の不備を厳しく問う内容が問題視され、
幾つもの作品にクレームがつき、放送中止に追い込まれた。


1965年の教科書検定制度を真っ向から問う作品の中で、旧日本軍の
中国への「侵略」か「進出」かをめぐる一節もクレームの対象となった。


こうした上層部の圧力に抗しきれず「判決」は、1966年8月10日を最後に
放送200回で幕を閉じた。


本作は、弁護士の苦悩と活躍だけでなく、被告人の心理まで鋭く描いた
社会派ドラマの元祖とされている。
   

 
(制作)テレビ朝日(NET)(脚本)高橋玄洋
(配役)岡崎弁護士(佐分利信)岸本弁護士(仲谷昇)井上弁護士(河内桃子)田中弁護士(沢本忠雄)石原勇(小川治彦)



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