判決 1962年(昭和37年) ドラマ傑作選

北海道・志里別町の農業、坂口宗助(益田喜頓)は、冷水害で生活困難になり、生活保護法の適用を受けた。
約四回にわたり、五万四千九百余円の生活保護費をもらったが、ある日、その保護費をだまし取った疑いで
逮捕されてしまう。
生活保護法は「国民はすべて健康で文化的な生活をおくる権利を有する」という憲法25条の趣旨を生かすために
設けられている。
ドラマは、北海道のある零細農民が生活保護を受けたばかりに、裁判にかけられるという事件を通して、
人間の基本的権利と、その現実について問題を投げかけている。
法律事務所を舞台にして、実際の裁判記録をもとに制作した社会派ドラマ。
佐分利信、仲谷昇、河内桃子、沢村忠雄の4人の弁護士が、裁判で直面した
社会問題や、矛盾を正面から掘り下げていくというストーリー。
憲法問題、差別問題、遺産相続など、シリアスなテーマが取り上げられた。
1960年代は、ドラマが社会矛盾を厳しく告発した時代であった。
それに伴って、そういった言論・表現を偏向とみなす圧力が強まり、
放送中止となる番組が相次いだ。
本作「判決」も、法制度の不備を厳しく問う内容が問題視され、
幾つもの作品にクレームがつき、放送中止に追い込まれた。
1965年の教科書検定制度を真っ向から問う作品の中で、旧日本軍の
中国への「侵略」か「進出」かをめぐる一節もクレームの対象となった。
こうした上層部の圧力に抗しきれず「判決」は、1966年8月10日を最後に
放送200回で幕を閉じた。
本作は、弁護士の苦悩と活躍だけでなく、被告人の心理まで鋭く描いた
社会派ドラマの元祖とされている。
(制作)テレビ朝日(NET)(脚本)高橋玄洋、本田英郎
(配役)岡崎弁護士(佐分利信)岸本弁護士(仲谷昇)井上弁護士(河内桃子)田中弁護士(沢本忠雄)
石原勇(小川治彦)坂口宗助(益田喜頓)ハル(清洲すみ子)君代(森山加代子)正太郎(山本勝)
