春が来た     1989年(平成1年)       ドラマ傑作選

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27歳のOL・直子(古手川祐子)は、月給の半分を家にいれ、おしゃれも恋も無縁の生活を送っていた。


母・須江(赤木春恵)も働き、化粧っけもなしで夫にずけずけとものを言う。

妹・順子(鈴木輝江)は、詩を投稿し賞金を稼ぐ高校生で、友達からは変わり者と呼ばれている。


仕入先の社員・風見(川野太郎)と交際を始めた直子は、中流家庭の娘のように言い繕っていたが、

家まで送られて本当のことがわかってしまう。

だが両親のいない風見は、直子の家族とのふれあいに心がなごみ、しばしば訪れるようになる。




1981年、月刊誌「オール読物」に掲載された向田邦子の同名短編小説のドラマ化。


主演の古手川祐子(29歳)はこの当時、映画「ひめゆりの塔」「細雪」など、巨匠監督に

起用され、演技派女優として、順調にキャリアを重ねていた時期だった。


本作は、等身大のOL役で、家が貧しいために、生まれて初めて出来た恋人の風見に会うたびに、

ついつい嘘で自分を飾ってしまうという、微妙な女心を細やかに演じている。


一方、ヒロインの家では、風見の出現で、ささくれだっていた母親が急に女らしくなり、

失業中でオドオドしていた父親も、父権を回復する。

さらには、いこじな妹までかわいくなり、風見が来るたびに春のムードになる一家。


こうした家族の微妙な変化を、鮮やかに切り取る手腕は、向田邦子ならではといえる。


だが1981年8月、その向田が、台湾への取材旅行中に、航空機事故で亡くなった。

まだ51歳の若さであった。本作「春が来た」は、彼女の絶筆作品となってしまった。



(制作)TBS(原作)向田邦子(脚本)竹山洋

(配役)立花直子(古手川祐子)父・周次(藤岡琢也)母・須江(赤木春恵)

妹・順子(鈴木輝江)風見隆一(川野太郎)



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