旗本退屈男 1930年(昭和5年) 邦画名作選 |
元禄年間、五代将軍・綱吉の治世。
旗本退屈男こと早乙女主水之介は、剣は諸羽流の奥義を極める将軍家の直参旗本。
身長は五尺六寸、堂々とした体格に派手な着流し、素足に高下駄という出で立ち。
額に冴える三日月は、かつてあるとき被った、天下御免の向う傷。
深川の本所屋敷に、妹の菊路、そして小姓の霧島京弥と三人で暮らしている。
あるとき、江戸の町で婦女子拉致事件が頻発しているとの知らせを聞いた主水之介。
持ち前の正義感から事の真相を探り始めるのだが…。
1929年(昭和4年)大衆雑誌「キング」に連載された時代小説家・佐々木味津三の同名小説が原作。
本作は、市川右太衛門の当たり役となった「旗本退屈男」の原点とも言うべき第一回作品である。
物語は、役人に追われた下手人が、本所の屋敷に逃げ込んだことから、主水之介に一旦匿われる。
主水之介は、奉行所の手に渡さず、男の顔に、目じるしの傷を付けて一旦逃がした。
翌日、その男から、お礼にと生鯛を贈られたが、主水之介は心に感ずる所あって、
これを野良猫に馳走すると、猫は立ちどころに死んでしまった。
事に依ったら、あの男は大悪党かも知れぬと、主水之介は奉行所へ出向く。
すると、あの男こそ婦女子拉致事件の下手人であることを知り、ここに主水之介、
奉行所と共力して、その一味を一網打尽に捕らえようと決意する。
そして一味の巣窟に乗り込んだ主水之介、すかさず「この三日月に身に覚えがあろう」
と大見得を切る。
右太衛門の本領は、舞台映えのする大きな体を活かした豪快な立ち回りにある。
さらに顔もでかく、ギョロリとした眼光は「旗本退屈男」を演じるにうってつけで、
観客も見ていて、退屈を覚えることは無いに違いない。
製作 右太衛門プロ 配給 松竹キネマ
監督 古海卓二 原作 佐々木味津三
配役 | 早乙女主水之介 | 市川右太衛門 | 百化十吉 | 伊田兼美 | |||||||||
菊路 | 小夜文子 | 赤谷伝九郎 | 大島敬輔 | ||||||||||
霧島京弥 | 大江美智子 | 目明し銀次 | 花木薫 | ||||||||||
杉浦権三兵衛 | 武井龍三 | 下僕七兵衛 | 大家血晶 |