一の糸 1969年(昭和44年) ドラマ傑作選


父と大正座に文楽を聞きに行った茜(佐久間良子)は、露沢清太郎(佐藤慶)の三味線の音が
心に強く焼き付く。
巧みなバチさばき、一の糸の厳しい音色 …。
ちょうど目をわずらっていた茜は、この日の三味線に魅入られ、以来、清太郎の名が忘れられず
思慕は募るばかり。
だが芸一筋の清太郎は冷たい。
その秋、眼病の直った茜は、意を決して清太郎の巡業先、大垣へ父にも告げずに会いに行った。
だが一夜を共にし、東京へ帰った茜を待っていたのは、清太郎にはすでに妻子があるという知らせ …。
有吉佐和子の同名小説のドラマ化。三味線の一の糸の音に魅せられた造り酒屋の一人娘の愛一筋の半生を描く。
本作は「五番町夕霧楼」「越後つついし親不知」 「湖の琴」など、一連の佐久間良子を代表する映画の
テーマとよく似た雰囲気の作品だ。
ドラマは、やがて妻を亡くした清太郎と茜は結婚することになるが、芸一筋の彼に、自己を犠牲にして、
すべてを捧げ、美しくも悲しい波乱の生涯を生き抜いていく。
まさに佐久間の独壇場とも言ってよい題材である。
一方、1968年のドラマ「流れ雲」で広沢虎造を演じた佐藤慶が、今度は文楽の三味線ひき清太郎として
佐久間の相手役を務めている。
そのほか脇を固める顔ぶれは、沢村貞子、柳永二郎、菅井きん、浦辺粂子、そして語りは東山千栄子と
なかなか渋いが、しっかりとした布陣である。
本作が第一作となるNHK「銀河ドラマ」シリーズは、絶好調の「大河ドラマ」にあやかり、平日夜九時台に
30分の帯ドラマを登場させ、一家団らんの茶の間をブラウン管に釘付けにしようとする作戦だ。
そのため、夜9時のNHKニュースを、わざわざ 9時30分に繰り下げた。
その結果、本作「一の糸」は、平均視聴率18.6%という好成績を達成し、1969年度のテレビ大賞を受賞。
一方、民放各社の同時間帯の看板番組は、軒並み食われてしまった形となり、まさに民放泣かせの
「銀河ドラマ」登場と相成った。
(制作)NHK(原作)有吉佐和子(脚本)成沢昌茂(番組)銀河ドラマ
(配役)渡部茜(佐久間良子)露沢清太郎(佐藤慶)渡部大造(茂山千五郎)渡部世喜(沢村貞子)
広沢修元(柳永二郎)よし(菅井きん)きの(浦辺粂子)語り(東山千栄子)
