最後の自画像 1977年(昭和52年) ドラマ傑作選
銀行を定年退職した小塚貞一(山内明)が、旅行に出たまま行方不明になった。
捜査願を受けた警察は、小塚の身辺を調べるが、家出や自殺の動機は見当たらない。
だが足取りを辿るうち、家を出る前に銀行から大金を引き出していた事実が判明。
さらに在職時の部下だった福村慶子(いしだあゆみ)という女性が浮かび上がった。
どうやら、この女性と蒸発して、新たな人生を歩むつもりだったらしい。
1960年「サンデー毎日」に掲載された松本清張の小説「駅路」のドラマ化。
原作は、全編30ページほどの短編で、清張の短編の中でも、傑作との呼び声の高い作品。
ドラマ化に当たって、脚本を担当した向田邦子は、大胆な脚色を加え、タイトルも変更した。
原作の中で、失踪した男性は定年を機に、それまでガマンし続けた家庭生活や家族を捨て、
自分のためだけに余生を過ごすことを求めたように描かれている。
向田は、失踪した男性の人生を、同じく家族や仕事を捨てて、後半の人生をタヒチで過ごした
フランスの画家・ゴーギャンの人生を重ね合わせて、物語をより興味深く膨らませた。
大胆なアレンジだが、それでいて原作の描かんとしているテーマに深みをもたらしている。
松本清張本人も、雑貨屋の老主人という役柄でドラマに出演しており、原作が改編されたことに
こだわりはないようで、むしろそれを喜んでいる様子であった。
(制作)NHK(原作)松本清張(脚本)向田邦子
(配役)小塚貞一(山内明)小塚百合子(加藤治子)福村慶子(いしだあゆみ)呼野刑事(内藤武敏)
北尾刑事(目黒祐樹)福村よし子(吉行和子)山崎(林ゆたか)便利堂主人(松本清張)