人生の風車 1931年(昭和6年) 邦画名作選
栄吉(結城一朗)は、都会を追われ、農村へと向かっていた。
彼は偶然、同じく都会を追われ、放浪する酌婦・お信(川崎弘子)と道連れとなる。
二人は、あるガレージで一夜を明かす。
翌日、主人・重蔵(坂本武)の好意で、ガレージの二階を借りた。
栄吉は、運転手の助手として働くことになった。
栄吉の留守中に、お信は、村の若者を集めて、煙草を吸い、酒を飲んだりした。
お信は、栄吉一人を働かせるのを済まなく思い、酌婦をしているのだった。
ある日、栄吉は、お常(花岡菊子)という娘を助けた。
彼女は、生活苦のため酌婦に売られるのが辛く、東京の叔父を訪ねていくという。
お常に嫉妬心を抱いていたお信だが、やがて姉のような同情心へ変わっていった。
お信が一夜家をあけた。戻ってきたお信を、栄吉は問い詰めるが、お信は黙っている。
そして、お常に幾らかの金を渡し、そのままお信は姿を消してしまった。
お常は、その金で東京の叔父の許へ向かい、お信は独り、小雨の中、あてどもなく歩いていた。
本作は、清水宏が、原作、脚本、演出を手掛けており、清水のオリジナルな世界観が色濃く
発揮された作品である。
夫婦でもなく、他人とも言い切れない微妙な関係にある男女が、互いに愛しながらも別れて
いくという、出会いと別れを叙情的に描いた秀作で、異色作とも評された。
これまで令嬢役が多かった川崎弘子が、一転して流れ者の酌婦を演じ、世間を驚かせた。
彼女が、幅広い役柄に対応できる演技派女優へと成長する契機となった作品でもある。
製作 松竹
監督 清水宏
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配役 |
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栄吉 |
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結城一朗 |
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重蔵 |
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坂本武 |
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酌婦・お信 |
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川崎弘子 |
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草摘み娘・お種 |
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若水照子 |
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お常 |
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花岡菊子 |
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吉公 |
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堺一二 |