蟹工船   1953年(昭和28年)       邦画名作選

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昭和初頭。折からの不況にあぶれた農民や工場労務者たちを乗せた蟹工船は、
ベーリング海の漁場めざして函館港を後にした。

連日吹きすさぶ嵐に船酔いが続出したが、現場監督の浅川は、情け容赦なく
漁夫たちをこき使った。

あまりの酷使に倒れる者が続出したが、仮病人と罵ってボイラーに縛り上げ、
反抗して撲殺される者も出る有様だった。

さすがに怒り心頭に発した漁夫たちは、遂に就業を拒んで要求書をつきつけ、
監督の浅川を叩きのめすに至った。



1929年(昭和4年)文芸誌「戦旗」に掲載された小林多喜二の同名小説の映画化。


原作の小説は、発表と同時に発禁処分になったのだが、地下流通などで三万五千部
が売れ、異例のベストセラーになった。

だが作者の小林多喜二は、1933年2月20日、官警に逮捕され、当日獄中で拷問死した。


小林は、支配階級の横暴と搾取の暴露という苛烈な内容の作品で名を知られる
プロレタリア作家であり、警察は思想犯として特に目をつけていたのである。

小林多喜二の死亡のニュースは、翌2月21日、ラジオと各紙の夕刊で報じられたが、
その死因については「取り調べ中に心臓マヒで急死」であった。


映画は、ベテラン俳優・山村聡の初監督作品だが、原作にほぼ忠実に作られている。

昭和初期の北洋漁場における労働者搾取の過酷な実態が容赦なく活写されており、
夜明け前の暗い日本の姿を映し出す貴重な作品となった。



 

 製作  現代ぷろ  配給 北星映画

  監督  山村聡      原作  小林多喜二

  配役    松木 山村聡 倉田 森川信
      船医・谷口   森雅之      監督・浅川   平田未喜三
      鈴木 浜村純 娼婦 日高澄子

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