からくり娘 1927年(昭和2年) 邦画名作選 |
水郷の夕暮れ、旅の写真屋(渡辺篤)は、街角で店を開くが、客は一人も来ない。
その時、ふと湖水に身投げしようとする娘(八雲恵美子)を見つける。
気のいい写真屋は、娘の婿になる決心をする。安心する母親(飯田蝶子)。
ところが、二日目の朝になって、その娘は、実は白痴であったことが分かる。
身投げの真似をしては、男の同情を惹くことに、哀れな幸福を感じていたのだった。
男はほうほうの態で逃げ出す。せっかくの幸運を取り逃がした母親はがっかりする。
だが白痴の娘の方は、ひたすら天真爛漫に、今日もまた湖水へ出かけるのだった。
五所平之助の作品に、本作「からくり娘」や「寂しき乱暴者 1927」「村の花嫁 1928」
といった「水郷もの」と呼ばれるジャンルがある。
潮来あたりの水郷を背景にして、村の娘と都会の青年の恋を描いた一連の作品である。
「からくり娘」は、旅回りの写真屋が、美しい娘の婿にと懇望される。だが写真屋の
幸福も束の間で、娘が白痴であったという幻滅に叩きのめされる。
笑えぬ喜劇に水郷を逃げるように去る旅の男。またしても娘の婿を取り逃がした母親。
何も知らずに無心に笑う白痴の娘。
本作は、水郷の自然を背景に、ユーモアにはじまり、ペーソスに終わる軽妙な人間模様が
描かれた作品として観客の好評を博した。
ヒロインを演じた八雲恵美子は、1926年(大正15年)松竹へ入社。五所平之助監督に見出され、
本作「からくり娘」に主演。以後も「村の花嫁 1928」「東京の合唱 1931」などの名作に主演。
日本髪の似合う美貌と艶っぽさが評判を呼んで、松竹の人気女優ナンバーワンとして活躍した。
製作 松竹
監督 五所平之助
配役 | 旅の写真師 | 渡辺篤 | 女工勧誘員 | 星光 | |||||||||
白痴の娘お民 | 八雲恵美子 | 老人 | 武田春郎 | ||||||||||
その弟 | 小藤田正一 | その娘 | 若月孔雀 | ||||||||||
母親 | 飯田蝶子 | 学生 | 戸田弁流 |