喝采 1988年(昭和63年) ドラマ傑作選
円たまみ(桃井かおり)は、かつて大ヒット曲「夢地獄」で一世を風靡した演歌歌手。
今では、そのヒット曲を看板に、キャバレーなどの地方巡業に精を出して稼いでいる。
彼女には、磯田兵吉(小林桂樹)という年配のマネージャーがいた。
兵吉は、今も大物歌手気分でいるたまみに、振り回される日々を送っている。
だが彼は、たまみにもう一度ヒット曲を出させることを夢見ている。
じつは兵吉には妻子がいるのだが、十何年も顧みず、一途にたまみの世話をしている。
このあたりで、彼女にもう一曲ヒットが出れば、あと10年はいける。
そう思う兵吉は、地方巡業を続けながら、骨身を削り、平身低頭する毎日だった。
1988年「文芸春秋」に連載された作詞家・阿久悠の同名小説のドラマ化。
年配のマネージャー・磯田兵吉は、落ちぶれた売れっ子歌手・円たまみを、
なんとか再起させようと奔走する。
兵吉がたまみに熱意を注ぐのは、じつは昔のある出来事が原因だった。
かつて、たまみは中学三年生の時、兵吉の教え子だった。
あるとき兵吉は、放課後の理科の実験室で突然、彼女を抱いた。
それ以来、歌の世界に入ったたまみの身の回りを、一切合切世話をしている。
たまみは、かつて喝采を浴びた栄光の日々を、いまだに忘れられずにいた。
新たな名声を夢見る彼女のために、最後のレコーディングを演出しようとする
男のロマンと純愛を、ベテラン小林桂樹が見事に表現している。
また、演歌の歌唱シーンがドラマの重要なヤマ場だったが、1973年に歌手としても
デビューした桃井かおりの哀愁漂う歌いっぷりも、話題づくりにひと役かった。
(制作)日本テレビ(YTV)ティンダーボックス(原作)阿久悠(脚本)野沢尚
(主題歌)桃井かおり「燃えつきるまで」(作詞:阿久悠、作曲:川口真)
(配役)円たまみ(桃井かおり)磯田兵吉(小林桂樹)小田咲子(立原美穂)磯田奈々子(南果歩)
高沢義人(すまけい)大八木明(加藤善博)中浦恭子(鈴木美弥)オールドミス先生(片桐はいり)