きりぎりす 1981年(昭和56年) ドラマ傑作選


舞台は、港町神戸のある病院。心筋症の少女が突然発作を起こし、仮死状態に陥った。
一刻を争う時、心臓外科医の有津(緒形拳)は汗だくになって心臓マッサージをほどこす。
オロオロするだけの青年医師(奥田英二)を怒鳴り、看護婦(池上季実子)にテキパキと
指示するが、少女の心臓はなかなか自発的に動かない。
ついに有津は開胸して、少女の心臓を直接、マッサージしだした。
極限の疲労の中、心臓蘇生術が続けられる。しかし何時間たっても心臓は動く気配がない。
だが、誰かが手を離せば少女は死ぬ。いつ離すのか。それは今度キリギリスが鳴く時だと有津は言う。
原作は、渡辺淳一の短編小説「少女の死ぬ時」。忍び寄る少女の死に、凄絶な闘いを挑む
心臓外科医、青年研修医、看護婦の苦悩を、きりぎりすの泣き声に投影させた作品。
全編の七割方は、この病室のシーンだが、少しも重苦しさを感じさせない。
むしろ、緒形や池上のイキもつかせぬ演技に、ある種のサスペンス映画を見るような
緊迫感を見事に醸し出している。
医師ゆえに家庭も顧みず、離婚の危機にある外科医の有津。
青年医の北岡は、勉強もせず、風子と遊びほうける甘ったれであった。
この三者三様の生き方を伏線に「生命の尊さ」とは何かへ凝縮させていく。
歯ごたえを感じさせる周到な作りとなっている。
(制作)KTV(関西テレビ)(原作)渡辺淳一(脚本)山田信夫
(配役)有津公一郎(緒形拳)有津久子(倍賞千恵子)北岡雄二(奥田英二)小坂風子(池上季実子)
山村直子(笠間一寿美)小西錦一(宇野重吉)
