黒い画集 あるサラリーマンの証言   1960年(昭和35年)  邦画名作選
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「課長さん、今日は何て言い訳なさるの、お家へ帰って」

話しかける千恵子に、石野(小林桂樹)は、気のない返事をする。

「そうだなあ…」

彼は、ビールを飲みながら、肴の冷や奴を浴衣の上へ落とす。

急いでフキンを取り、拭いてやる千恵子(原知佐子)…。


東和毛織の管財課長・石野は、妻と二人の子供に恵まれ、家庭生活も順風満帆だった。

その一方で、同じ課の事務員・梅谷千恵子との情事も楽しんでいた。


7月16日、石野は会社の仕事を終えると、新大久保の千恵子のアパートを訪れた。

その帰途、駅の近くで保険外交員の杉山(織田政雄)とすれちがい挨拶をかわす。

帰宅すると妻には遅くなった理由を、渋谷で映画を観たからだと言い訳をする。


その翌日、石野は向島の若妻殺しの事件を知る。やがて石野は刑事の訪問を受けた。

7月16日の午後9時30分頃、新大久保で杉山に会ったかどうかと質問される。

千恵子との関係を知られたくない石野は、杉山と会ったことを否定するのだった。




1958年「週刊朝日」に連載された松本清張の推理小説「黒い画集 証言」の映画化。


顔見知りの保険外交員・杉山が殺人容疑者として逮捕される。

杉山のアリバイについて、石野は警察で証言を求められる。

彼は、会社と妻にバレないよう偽証する。

だが数日後、千恵子のアパートで事件が起き、彼自身が疑われる立場になってしまう。

石野は、前のは偽証だと言ったが、信じてもらえない。残された道は一つ…。


本作は、自己保身から嘘の証言を重ね、自ら窮地に追い込まれていく男の姿が描かれる。

人間のエゴを追究した松本清張ならではのテーマがこの作品にも息づいている。



 
 
 製作   東宝

  監督   堀川弘通  原作 松本清張

  配役    石野貞一郎 小林桂樹 梅谷千恵子 原知佐子
      石野邦子 中北千枝子 杉山孝三 織田政雄
      石野君子 平山瑛子 杉山ミサエ 菅井きん
      石野忠夫 依田宣 竹田部長 中村伸郎

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